先達

2006/07/20, 23:34 | 固定リンク

7月20日 木曜日 雨 

 大先輩がわざわざ俺の仕事場まで足を運んでくれた。彼のソロ・アルバムのために、2曲書くことになった。岩のような口から語られたその人生は、まるで永遠に続くジェットコースターのようで、俺が知らないことだらけで、あり得ない物語を聞いているようだった。あまり時間もないし、このような人物が歌う曲を俺が書いていいのか、と云うプレッシャーもある。けれど、彼が音楽を語る時、その鋭い目は少年のように輝くのだった。世代を超えて、みんなが大声で歌いたくなるような曲を書こうと思った。マーチのリズムに乗せて、ずんずんと進んでいくような人生と云う旅の歌。彼が帰ってから、大声でオーディエンスが歌っている姿を夢想してメロディーを書いた。それは随分前に曲を書き始めてから、初めてこみ上げてきた欲求だった。同時に、それは新しいアルバムに欠落していた要素でもあった。こうやって、人との出会いが、新しい境地に必然として連れて行ってくれる。キツいけど、音楽の旅は悪くない。
 別れしな、ディランがジョニー・キャッシュのために書いた曲が入ったレコードをプレゼントされた。大事にしようと思う。

 

by 山口 洋