ツアー終了、東京にて。

2006/10/06, 23:56 | 固定リンク

10月6日 金曜日 暴風雨 

 今日に限って、どうして暴風雨なんだよ、と信じてもいない神を恨む。会場まで歩いていける俺ですら、傘をまともにさすことが不可能な天候。電車も止まってると聞いた。全く。おかげで、会場は満杯とは云えない状況だったけれど、この雨の中、足を運んでくれた人々が少なからず居てくれたことがとても嬉しかった。
 始めは天候のせいか、と思った。ステージと客席の中空に風景を描いてるつもりなんだけれど、どうにもうまくステージ上の風景が伝わっていないようだった。不思議に思ったので、終演後いろんな人々に聞いてみた。ある人物は「音がデカすぎた」と云い、別の人物は「音のバランスが悪かった」と云った。ふむ。そうだったのか。俺たちは一度も表の音を聞いたことがない。残念ながら、その望みは一生叶うことがない。だから、心から信頼してるスタッフに全てを託すしかない。音に正解はない。ある人にとって、暴力的だと感じる音量が、別の人物にとっては物足りないものだったりもする。体調や温度や湿度、客の入り具合、時間と云ったものも大きく影響する。意外に思うかもしれないけれど、うちのバンドで大音量を望んでいる者はひとりもいない。このクラスの箱であれば、楽器は生音でも充分に演奏できる。果たして、表の状況がどうだったのか、結局のところは俺たちには永遠に分からない。ただ、この箱に問題があるとすれば、PAブースが2階の端っこにある点にある。うちのエンジニアがいくら素晴らしい技術を持っていたとしても、あのブースから、全ての音を想像し、音を構築するには無理があり過ぎる。その点で客席の人々に対して、耳に優しい音を提供できなかったとするなら、会場選びを含めて、今後きちんと考えたいと思う。何故なら、我々のライヴに特殊効果がある訳でなく、「音」そのものが生命線だから。

 何はともあれ、ツアーは終わった。レコーディングしていない新しい曲たちも演奏して良かった。いいところも、そうでないところも、如実に見えたから。願わくば、足を運んでくれた人々にとって、「音楽の場所」や「力」を感じてもらえたら、嬉しい。この一年の歩みは、本当にタフなものだった。終わってないけど。タフなものだった。でも、俺は「人」や心が奏でる「音楽」を信じているし、笑っている顔、泣いている顔、エトセトラ。それらを見ているのが好きだ。この国もできるだけ自分の足で歩いてみた。相当ヤバい、状況にあると思う。音楽をとりまく環境もふくめて。でも、絶望はしていない。全くしていない。「人の落下を止めることが出来るのは愛だけだ」。この言葉にビリっと来てくれる人が居る限り、この世は捨てたもんじゃないと、俺は思う。ありがとう。少しだけ、身体を休めたら、レコーディングの最後のクールに向かいます。多謝&再見。

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by 山口 洋