リハーサル最終日

2007/04/11, 23:51 | 固定リンク

4月11日 水曜日 雨 

 リハーサル最終日。やり残したことは、何ひとつなく。後は野となれ山となれ。

 生まれてこのかた、東京ドームで空を飛びながら演奏したい、とか、マグネシウムを焚いてみたいとか、思ったことは一度もない。ただ、ライヴを一本の映画みたいに楽しんで欲しいとは思っていた。そして、それが今だ、とも。音楽と映像が互いに絶妙の距離で響き合っている空間。夢想するのはタダ。でも、それを制作するには莫大な予算と労力がかかる。
 W君、M君、そしてもう一名。とある場所で知り合った彼等のモノ創りのスピリットが素晴らしかった。だから、声をかけてみた。引き受けてくれた。バンドのメンバーであれ、スタッフであれ、映像作家たちであれ、その人を選んだと云う時点で、実のところ、もう俺の仕事の大半は終わっている。例えば、ウソのような本当の話。その昔、炎のデザイナー、スントー・ヒロシのアイデアで、ジャケットを横尾忠則さんに描いてもらったらどうかっちゅー話になった。まずは会わなきゃってことで、ダブル・ヒロシは彼のアトリエを訪ねた。「どうも、初めまして」。その後、スントー・ヒロシが「かくかくしかじかで。ジャケットを描いて欲しいんです」、と。そして横尾さんはこうおっしゃった。「もう描きました」。俺は目が点になったが、彼は階上から「Tokyo city man」のジャケットになったあの絵を持ってこられた。俺はスントー氏の目が「キラリン」と光っているのを見逃さなかった。多少の記憶違いはあるかもしれない。でも、これは実話なのだ。
 今日初めて彼等の作品を観た。本当に素晴らしかった。嬉しかった。限られた条件の中でも、彼等の発想は限られていなかった。嬉しかった、アゲイン。後は小さなハコでどう見えるのか、そもそもライヴに映像を使うこと自体、一歩間違えると危険な行為だったりもするのだ。我々自体がフィックスされた演奏をしているバンドではないのだし。でも、漕ぎ出してみようと思う。人生とこの「瞬間」は一度しかないのだから。ありがとう。

 リハーサルを終えて、全ての楽器は積み込まれました。じゃぁ、いろんな街で会えるのを楽しみにしています。名古屋のベリー・初日には初日にしかないものがあるでしょう。大阪は何と、バナナホールです。嬉しい。福岡は九州出身組の演奏が他の場所と全く違うと、北海道中標津出身の細海魚は云います。「それは良い意味で?」と聞くと、彼は「それは秘密」とキラリンとした目で云うのでした。東京の話はまた後日。

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by 山口 洋