盛岡にて

2007/06/19, 00:52 | 固定リンク

6月18日 月曜日 晴れ 

 昨日まで野郎どもに囲まれていて、愉しかった。男はいつまでたっても男の子(どうなんだろうね、この表現)なのだ。今日からは本当に一人きりで旅をすることになる。その前に伝統の津軽塗(素晴らしかったよ)を見せてもらって、S某と五重塔の前で男の子の会話をした。ひひ。
 盛岡。久しぶりに来たなぁ。でも一人だと寂しいなぁ、なんて事を考えていたら、楽屋の入り口にS某と竹内君が立っていた。おぉ、ブルータス。持つべきものは友達だ。ライヴ、楽しんでくれたかい?決して沢山の人が会場を埋め尽くしていた訳じゃないけど、音楽の持つ力を受け取ってくれたら、俺は嬉しい。若者から年配の方まで。いろんな人が来てくれていた。ありがとう。東北の人は総じてシャイだと云われるけど、それでいいじゃないか、と俺は思う。だって、東北には他の場所にはない良さがあるんだもん。街の真ん中を流れる川に鮭が遡上するなんて、俺、聞いたことないよ。

 たとえば、こんな光景を見たんだ。終演後、サインをしていたら、若いカップルが二人、互いの財布の中身を引っ張り出して逡巡している。DVDが欲しいみたいなんだけど、二人のお金を足しても、それが買えない。そしたら何と小屋の人がお金を貸してるではないか。何だかなぁ、心温まる光景だったなぁ。こんな小屋、見たことない。二人はヤイコさんが大好きで一緒にバンドをやっているらしい。俺も妙に心がほんわかしたんで、ささやかなプレゼントをあげた。二人に幸あれ。

 ところで、野郎どもは盛岡に来たら冷麺だろ、と。それを喰いに行った。確かに美味かった。でも隣のテーブルに慇懃無礼なオヤジどもが居て、俺をいらつかせていた。奴らの言葉に東北の響きはなかった。多分。そのうちの一人が、事もあろうに勘定の段になって、若い店員に向かって「この金、北朝鮮に送るんじゃねぇだろうな」と云い放った。S某と俺は一瞬目を見合わせて、互いの血管が5本くらい切れたのを瞬時に確認したが、ぐっと堪えた。こんな輩、喧嘩する価値もねぇ。ゴミ以下だ。S某が云った。「あのな、生まれる国を誰も選べないんだよ。」奴らは領収書を要求し、会社の金で飲み食いして(それが悪いとは云わんが)、赤ら顔で去って行った。「美味しかったよ、ありがとう」。その一言がどれだけ互いの気分を良くするんだろう。

 マネージャーやイベンターにプロテクトされることなく旅をすると、いろんなものを見る。そのひとつひとつがエネルギーとなる。だから旅は止められん。例の店員は、その後も、一生懸命働いていた。その姿に頭が下がった。青年よ、君の未来に幸多かれ。さぁ、気分を変えて、と。俺は一旦関西に飛んで、また東北に戻ってきます。東北、いつも、本当にありがとう。多謝&再見。

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by 山口 洋