無垢にして強力。古都京都は拾得にて。

2007/10/09, 02:29 | 固定リンク

10月9日 火曜日 晴れ 

 ダメだ。身体がクズだ。云うこときかず。でも街は昨日あたりから急にキンモクセイの香りがする。秋だね。温暖化でも確実に秋はやってくる。京都と云えば、ずっとずっと永きに渡って俺たちをサポートしてくれている、ええい、もう実名だ。その名もホシハラ・サユリ。俺はツアーの食事にもはや食傷していた。お願いします。俺はつまらない男なんです。美味しい白いご飯と、味噌汁と、漬け物と、そんなんでいいんです。でも、それを喰うのは流れ者には難しいとです。京都なら絶対に喰えるはずだと。奴なら絶対に分かってくれるはずだと。何せ、人間は喰ったもので出来ているのだから。霜降りの牛肉を喰わなくても何ともないケド、美味しいご飯と味噌汁を喰ってないと、俺は確実に弱る。ザッツ・日本人。お願いします、サユリ姫。
 そこで連れて行ってくれたのが、烏丸丸太町にある「十二段屋」。ご飯と味噌汁と、ダシ巻き卵と、おばんざい一品と、漬け物。それだけで1800円が高いのか、安いのか、それは読者の想像に任せます。でもね、俺は蘇った。本当に美味かった。
 それから俺たちは共通の友人を弔うために、彼の店があった場所に行って、線香を立てて、祈った。それぞれのやり方で。彼は末期ガンに冒されていたが、「来年あたり、ここで歌ってよ」と云ったまま死んでしまった。ずっと、心の何処かに澱のようなものがあった。だから、どうしてもここに来たかった。M君。約束は果たせなかったけど、あんたの云ったことは忘れととらん。

 拾得。ここにはテリーさんと云う、素晴らしいオーナーが居て、35年も元酒蔵であるこの店を守っている。もはや、言葉はなし。俺は彼が大好きだ。流れ者たちと「35年!」もつき合ってきたんだよ。信じられる?でも、ライヴはタフなものだった。楽しんでくれたかな?だと、いいけど。俺のギャグはすべりっぱなし。だから、演奏に魂を込めた。このシリーズは今日で終わり。だから、喉が壊れても、いい。多分。テリーさん。サユリ姫の言葉を借りるなら「無垢にして、強力」。俺はこのツアーで何かを掴んだつもりでいたけれど、まだまだ、途上の道。今日はそれを思い知った。ありがとう。京都。

 沢山の「交通安全お守り」をもらっとるとです。ツアーの間に。神様が混乱するんじゃねーか、っちゅー位に。ありがとう。

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by 山口 洋