how to record

2007/11/02, 16:30 | 固定リンク

11月2日 金曜日 曇り 

 「made in Aso」を聞いてくれた人々から「まるで、あんたが俺の家に来て、歌ってるみたいだ。しかも、山の中の空気や天候と共に」と云った感想が寄せられています。とても嬉しく思っています。受け取ってくれて、ありがとう。
 その中で、「どうやってこれを録音したのか」という質問が多かったので、みなさんの想像力を邪魔しない程度に説明しておきます。

 写真にあるように、このような状況で録音されました。基本的にマイクは2本。オフ気味に立ててあって、一本は歌をもう一本は主にギターの音を狙っています。とある曲の「虫の声」だけは演奏と同時に戸外に2本のマイクを立て、それを聞きながら、虫と共鳴しつつ演奏しています。つまり同時に「演奏?」していたのは無数の秋の虫です(季節は夏だったけど)。
 音楽のダイナミクスを殺す、コンプレッサー等は録音のピークを押さえるためにだけ使っています。つまり、できるだけ良いケーブルで、短い距離で、ダイレクトにレコーダーに記録する。よほどの場合を除いて、修正は一切施さない。そのようなコンセプトでした。大事なことは、「歌いたい」と思った時に、「歌いたい曲を歌う」ことです。ですから、電源はいつでも入れられ、即座に録音が可能な状態にしてありました。

 ライヴであれ、レコーディングであれ、僕は甚だ「状況」に引っ張られる男です。以前はどんな状況であれ、そこで一定のクオリティーを維持するのがプロだと考えていましたが、あまりにもアナーキーな状況や会場で演奏を続けているうち、「場所」に抵抗しても無駄だって事に気付いたのです。そこには「歴史」があり、いろんなものが相まって、空気を作っているのだから。そうすると、不思議と「音楽の神様」としか呼びようのないものがやって来るのです。雨が降ったら、必然的にそのような音楽にしかなりません。僕は雨や風を止めることは出来ません。敢えて、そのような音を拾うマイクを立てなくても、勝手に音は記録されてしまう。人工的な音と違って、それらが不快に感じられることはありませんでした。雷が落ちた時はさすがにびびったけれど。

 都会の地下にあるようなスタジオを否定はしません。ただし、僕に限って云えば、そこで奏でる音楽と山の中とのそれでは、bpmやノリが激しく異なります。食事も異なる(山の中では自分が作るか、誰かに作ってもらうしかない)ので、音楽も変わる。人はすべて、食べたもので出来ています。このようなやり方が可能になったのも、テクノロジーが進歩してくれたからです。僕らがデビューした当時、スタジオにある機材をすべて手に入れることなんて、到底出来ませんでした。音の入り口と出口さえ、しっかりした機材であれば、あとは「運搬可能!」な機材でどうにかなるのです。素晴らしい!

 説明しないといいながら、長くなりました。「不可能???」。そのような想いも受け取ってくれると嬉しいです。音楽はいつだって僕らの側にあると思っています。enjoy yourself!

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by 山口 洋