long story

2007/11/15, 20:59 | 固定リンク

11月15日 木曜日 晴れ 

 ハロー、エブリワン。九州は抜けるような青空です。食い物ってすげぇ。昨日、大分が育んだあまりにも美味いもの、もう喰えませんっちゅーくらい頂いたら、元気バリバリです。今日は大分から宮崎に移動。帯同してくれているイベンター「つくす」は本日、福岡で別の現場があるため、早朝にホテルを出発しました。お互いここまで忙しくなると、笑うしかないっちゅーか、がはは。昨日、旅の先輩リクオから写真つきのメールが来たのですが、さすがに先輩だけあって、しっかり温泉でくつろぐ奴の姿が。こちとら若輩の流れ者は、毎日アンビリーバブルな日々をがむしゃらに送っております。何か、俺の日本語ヘン?
 そんな訳で、「つくす」と別れた俺は、久しぶりに特急「にちりん」で宮崎を目指すことになりました。大分ー宮崎って、特急で3時間すよ。信じられる?隣の県だよ?そんな距離感を体感するのも若輩流れ者にとっては大切なことです。

 さて、道中眠れない俺は久しぶりにゆっくり記す時間が出来たので、書こうと思っていて、叶わなかったストーリーを今日こそ記すことにしました。長くなるけど、読んでくれると嬉しいです。

 来年、初頭にリリースする「land of music」の完結編 - the Risingにまつわる話です。

 アルバムプロジェクト。全国のみなさんのサポートに支えられ、アルバムを完成させるまでの道のり。約2年に渡るそれらの日々を克明に映像で記録していたOと云う男が居りました。何かのCMじゃないけれど、「不可能はない」と無意味に突き進む男どもの日々を記録することはひどく意味のあることのように思えたのです。例え職業が違っていても、同じこの時代に生きる人々にとって、抱えている問題は根源的には同じだと思ったからです。
 さて、そのO、全国津々浦々、レコーディングはもちろん、ライヴに至るまで、ほぼ仕事を投げうって、巨体を揺らしながら、重たいカメラを担いで現れました。いったいどれだけのテープとエネルギーが消費されたかは、奴のblogを参照して下さい。唯一、不思議だったのは、あれだけハードな旅を共にしたにも関わらず、奴の体型が殆ど変化しなかったことです。
 無事、「land of music」は完成し、奴は膨大な記録したテープの編集に入りました。俺は奴に「サンダンス映画祭のドキュメンタリー大賞」を狙うつもりで行け(そんな賞、あるのかどうか知らんけど)、と伝えました。完成した暁には、その作品はDVDとして「land of music」のツアーでみなさんに観てもらうつもりで居ました。が、しかし。奴はあまりにバンドに密着、圧着したがゆえ、客観性を見事なまでに失っていました。何度、編集をやり直しても、完成にはほど遠く、あわやお蔵入りか、っちゅーところまで追い込まれたのでした。そこに登場したのが我らが渡辺圭一監督。奴はプロットを書くこともなく、「感覚的」に作品を仕上げていく男です。こうして、渡辺監督とOっちゅー、奇妙なコンビでの編集作業が始まりました。作業は約一月に及びましたが、冒頭の5分を観ただけで、このデコボココンビにしか出来ない作品になっていることに気付きました。主観と客観、真摯な視点と笑い、エトセトラ。絶妙なバランスでした。滅多な事では興奮しない魚先生がそれを観て、進んで細かい音声の調節を施しました。まったく我々はどこまで諦めないんだ、と苦笑しつつも、こうして作品、「searching for Land on music」がほぼ1年遅れで完成しました。
 
 続いて。今年4月のツアーで、我々は映像チームと初めてタッグを組みました。「mood films」の連中の感覚、及び仕事内容は本当に素晴らしかったのです。僕は彼等の仕事に口を出してことはありません。すべて、彼等が素材を撮影し、編集し、ライヴの現場で演奏と響き合っていたのです。このツアーに足を運べなかった人々にも是非観て欲しかったので、ツアーの最終公演、リキッドルームでのライヴの映像の編集を彼等に依頼しました。望んでいたのは、ありがちなライヴ映像ではなく、「ハレとケ」、「日常と非日常」、「ライブ会場に居るような、そうでないありきたりの日々に居るような」、今まで何処にもなかったような作品を作ってもらう事です。例によって、僕は何も云いませんでした。ただ、「思いきりやって欲しい」と。彼等が睡眠時間を削って、作り上げたものは、言葉にすることが出来ません。それゆえの映像なのです。素晴らしい、の一言です。この作品「Land of music / in Action」はリキッドルームでのライヴがほぼ完全収録されています。 ブラボーです。
 「Land of music / in Action」の音のミキシングは僕が担当しました。実のところ、5月に阿蘇でその作業を終えていました。しかし、彼等から次々と新しい編集が送られてくるたび、その仕上がりに圧倒され、ミキシングをやり直したくなりました。最終的に音を整える作業(MAと云います)は音のマエストロ魚先生が担当し、僕らはその映像と響き合うべく、ミキシングとMAを何度もやり直しました。バンド史上、最高の音質です。みなさんの自宅のテレビで観て頂いても、それを実感してもらえると思います。魚先生から最後に音のファイルを受け取り、それを車の中で、僕はチェックしていました。すると、映像とはまた違った世界が目の前に浮かんでくるのです。自分で云うのも何ですが、ちょっとカンドーしました。これはCDとして作品にすれば、DVDとはまた違った世界を楽しんでもらえる。そんな訳で、「the Rising」にはライヴCD2枚組も同梱することになりました。この音源に関しては、気軽に手にしてもらえるように、配信することも現在模索中です。
 最後にこの日々を僕の言葉で記した本「days of Land of music」。これも実は、今年4月のツアーで皆さんに手にしてもらうつもりで居ました。デザイナーのS君、編集者のS君。この二人と共に、作業は順調に進んでいました。が、しかし、事もあろうに完成を間近にして、「二人とも」(二人とも、ほぼ同時にっすよ)病に倒れたとです。嘘だろ?と思いましたが、僕は彼等の才能、情熱を信頼、尊敬しています。どうしても彼等と共に完成させたかったのです。彼等はあまりに忙しく、身体や心に鞭を打ってきた過去の日々の過ごし方を変え、また愛する仕事に復帰する手段として、この本を完成させてくれました。その事が何よりも嬉しかったとです。

 随分長くなりました。「Land of music / the Rising」は悪く云えば、成り行き。良く云えば、自然な流れの中で、このような形に辿り着きました。その流れはみなさんのサポートの元に出来上がったものです。しんどかったけれど、素晴らしい旅でした。我々は頂きが見えないまま、山を登り始めたのだけれど、辿り着いたところはまぎれもなく「Land of music」のひとつのピークでした。ありがとう。パッケージに関しては長くなるので、今回は割愛しますが、デザイナーW君と炎のパッケージ職人N社の力で、あり得ない形に仕上がりつつあります。アルバムプロジェクトに端を発し、多くの人がそれに関わり、幾多の困難を乗り越えて、これで「Land of music」は完結します。「the Rising」。仕様が明らかになったら、またスタッフの方からアナウンスがあると思います。来年1月のバンドのツアーでみなさんに手にしてもらえるよう、スタッフも頑張っています。愉しみにしていて下さい。

 特急「にちりん」。牧歌的な風景の中を宮崎目指して走っています。おいおい、本当にこれ特急かよ?っちゅースピードですが、速過ぎる新幹線より、心が和みます。九州シリーズ、残すところ、明日の宮崎、明後日の鹿児島2本です。是非、足を運んで下さい。みなさんに会えるのを愉しみにしています。今日は日本語ヘンでごめんね。列車が揺れてるからかな?

追伸
俺の初めてのソロ・アルバム「made in Aso」を置いてくれているお店の情報。追加版です。

東北地区

1. アサイラム(青森県弘前市)  業種 - 魂の入った飲み屋
弘前市が誇る入魂のレコード・ショップ、「joy pops」亡き後、店主ヒロシ(54)が始めたアナーキーな飲み屋。ここには5万を超える収録曲を誇るスーパー・コンピューターから絶え間なく素晴らしい音楽が流れています。飲み物はすべて500円。意味不明なチャージなんて、もちろんありません。あるのは無愛想な店主の妙なホスピタリティーと極上の音楽のみ。俺が飲み屋に求める全てがここにあります。ただし、店主変人につき、店のありかは伝えません。自分で探して下さい。土手町にあります。

2. モリタミュージック(福島県相馬市) 業種 - 身体はメタボってるけど、魂キレキレの正しいレコードショップ
モリタさんちは代々続くレコード屋さんです。業界に吹く逆風をその無意味にデカい身体でモノともせず、今日も魂込めて、良質の音楽を紹介し続けています。1995ツアー(12年前)に出会いました。お互い、こんなに深い仲になるとは。とほほ。

3. カフェ・ミルトン(宮城県白石市)
このお店にはポルトガル語を話す「音楽の神様」が棲んでいます。食べ物も、酒も、会話も、ホスピタリティーも、流れている音楽も極上です。12/16に僕も再訪します。是非。

東京
4. knife* acoustic groove* (渋谷区代官山) 業種 - 熱すぎるジュエリーショップ
云わずと知れた、「羽根シリーズ」を製作してくれているジュエリー・ショップ。ディレクター、中野さんの仕事っぷりを観ると、この世界にも「ロックンロール」っちゅー言葉があんのね、と納得します。是非、実物を。彼と話していると、アイデアが湧いてくる(もちろんミュージカルなことも含めて)ので、最近良く会ってます。お互い熱すぎるのが「タマニキズ」だけど。
http://k-a-g.com/

5. a workroom (渋谷区代官山) 業種 - 仕立て屋さん
ここのプロデューサー及び、クリエイティヴディレクター、岡田さんからメールを頂いて、実際に足を運んできました。その洋服にかける情熱は本物でした。おそらく殆どの商品がユーザーのニーズに合わせた一点ものなんだと思います。ディスプレイしてあった、ツイードのコート。欲しい。
http://www.a-workroom.com/

お願い
この代官山の2店舗にしか、今のところ東京には置いてありません。相当数、納品されているので、即座に売り切れることはないと思います。安心してどうぞ。けれど、これらのお店の本業は云うまでもなく、レコード屋さんではありません。ですので、それぞれのサイトをチェックして頂いて、そのお店に置いてあるものに、興味を持った方が訪れて頂ければ、と勝手ながらに思います。

中部地区
6. ハートランド・スタジオ (愛知県名古屋市)業種 - ライヴハウス
云わずと知れた、我々がツアーでいつもお世話になっているハートランド・スタジオです。

中国地区
7. 月光荘 (山口県山口市) 業種 - 厳選素材と雑穀レストラン&カフェ
ここのオーナーには田中さんには、先日の「月の庭」のライヴでお会いしました。月光荘はオーガニック・レストラン「月の庭」の流れを汲む、生まれて間もないお店です。まだ僕は足を運んだことがないのですが、田中さんの目に宿る光は「本気」と書いて「マジ」でした。僕の父親が亡くなる前まで勤務していた「山口大学」のすぐ側にあるってのも、何かの縁だなぁ、と。いつか、行ってみようと思っています。っつーか来年は山口県、行きます。

九州地区
8. ボーダーライン・レコード (福岡店、小倉店、久留米店) 業種 - 炎のレコード屋さん
ヒートウェイヴが故郷福岡でくすぶっていた1987年。社長、甫足(ほあし)さんが僕の目の前に現れ、ポンと現金を差し出して、「これでアルバムを作りんしゃい」と。そうして出来上がったのがアルバム「my life」です。その恩を忘れたことはありません。このレコード店が地元のミュージシャンに果たした役割はこれまでも、これからも変わることはないでしょう。感謝。

9. サウンド・コスモ (福岡県久留米市) 業種 - ロックとアニメに強い、商店街のレコード屋さん
先日の僕のblogにあるように、火事で全焼しました。けれど、彼等はその翌日からワゴンを借りて、商店街の路上で、お店を再開しました。その魂のワゴンには、「made in Aso」も乗っています。近くに住んでいる方は是非、この魂の入ったお店をサポートしてあげて下さい。今週、日曜日の福岡でのイベントにはおそらく彼等が物販ブースにやってきます。直に言葉を交わしてみて下さい。

10.レコード屋 iN a DAY (熊本県熊本市南坪井町) 業種 - 中古レコード屋さん
来年でオープン14年目になる中古メインの、しかもアナログ8割のレコード屋さん。先日の熊本のライヴで「うちにも置かせろ!」と直談判。その際、たまたま彼が持っていた自分の店の商品を見せてもらったのですが、すべて、俺持ってました。がはは。

by 山口 洋