その表情

2008/02/15, 23:11 | 固定リンク

2月15日 金曜日 晴れ 

 俺の最後のベースボール・ヒーロー、カズ山本が引退してからと云うもの、野球場に足を運ぶことがなくなった。ドームではどうしても気持ちが盛り上がらんのだ。チケットを買って、スタジアムの階段を昇って、さぁっと視界が拓けて、でっかい空とダイアモンドが見えてくる瞬間がたまらなく好きだった。俺の聖地、平和台球場がなくなった今、広島市民球場と甲子園とフェンウェイパークには生きてるうちに行かなきゃ、と思う。俺の父親は何も教えてくれなかったけど、キャッチボールだけは教えてくれた。いつだって、車の中にはグローブと硬球が積んであるけど、今や都会には相手が居ても、それを楽しむ場所すらない。親父と息子はどうやってコミュニケートするんだろう?と、子供の居ない俺は不思議に思う。今まで、何人の人間とキャッチボールをしたのか不明だけれど、池畑さんとミスチルのケンちゃんの投げる球は凄かった。双璧だ。キャッチボールはいろんな事を語るのだ。
 ニュースを観ていたら、野茂が映った。おおっ。自分の齢のせいか、オールド・ルーキーのような選手にどうしても目が行ってしまう。かつて、投げる不動産屋と揶揄された桑田も、同じ歳の工藤もみんないい顔をしている。いろいろあったに違いないけれど、「野球が好きでたまらん」と顔に書いてある。ただ、単純に、野球が好きでたまらん、と。辿り着いた場所が、そこだってことが、ひどく俺を励ますのだ。彼等が活躍する姿をオープンエアの球場で観たい、と思うし、願わくば、自分もそのような人物でありたいと思う。

by 山口 洋