春に想う
2008/03/29, 18:43 | 固定リンク
3月29日 土曜日 晴れ
カーテン越しに漏れてくる春の光を浴びながら、ミキシングに没頭しています。思えば、いい時代になったなぁ、と。スタジオに行くことなく、こうやって音楽と戯れることが出来る訳だから。飽きたら散歩したり、コーヒーをいれたり。僕は外食が嫌いで、一人で居る時は殆ど「修行僧」みたいな食事しかしません。フォアグラとかキャビアとかステーキとか、そんなものは仕事場にはありません。当たり前か。
随分と前のことだけれど、中国の盧溝橋を訪ねたときのことです。その場所は僕の父親の人生を変えた場所です。そこを起点にするもろもろの事が、彼の人生を大きく変えたのです。詳しくは書きませんが。だから、どうしてもそこを訪ねてみたかった。中国語がまったく話せないので、北京で大きな紙に「盧溝橋」と書いて、その場所を目指しました。東京に暮らす人にもいろいろあるように、人民もいろいろです。何人かの親切な人々が身振り手振りで方法を教えてくれます。何度も電車やバスを乗り継いで、僕はその場所に辿り着きました。盧溝橋には「抗日資料館」が併設されています。そこに展示されているものはいわずもがな、日本軍が行った行為についてのものです。直視するのが辛い類いのものです。そこに足を踏み入れた僕は、広島や長崎の「原爆資料館」で展示を見つめるある種のアメリカ人の心境と似たようなものだったと思います。冷たい視線を感じたのも事実。けれど、来てくれてありがとう、と云ってくれた人が居たのも事実。僕に出来ることは?考えた末、橋の下で書いたばかりの「ハピネス」を歌いました。あとはこの経験を、これからの自分にどう生かすかが問題なのだ、と強く思いました。全体的な視野と個人的な感情、それが融合する場所があるのか、ないのか。それは未だに模索中です。ただ、僕にとって、メディアが伝えてくれることは「参考」にしかならず、いつだって、自分の問題として、自分の目でそれを観て、考えていたいと思っています。決してヒステリックになることなく。
「次の世代に残したいのは家や土地ではなく希望だ」と云ったシンガーが居ました。ある作家は「この国には何もかもがあるけど、希望だけがない」と。まったく同感です。でも、毎年忘れず咲き誇ってくれる桜を眺める度に、嬉しさと切なさと儚さを同時に受け取るのです。「音楽の力」。そのかけがえのない「espoir」を次の世代に伝えたいと僕は思っています。
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