re-write

2008/04/09, 11:51 | 固定リンク

4月7~9日 

 月曜日。早速スパイクを買いに行った。30年振りにそれを履いてみる。子供の頃、空の下で興じていたあれらの時間が、また形を変えてやってきた。心が喜んでいる。不思議な感覚。

 夕刻。横浜のサムズ・アップにモザイクを観に行く。トラッドがある種の伝統芸であるのなら、そこに埋没している人々が多い(悪いことだとは思わないけれど)中、彼等は既に自らのキャリアを確立しているにも関わらず、世界各地のトラッドを融合させ、未来に向けて昇華させようとしている。その心意気に、胸打たれる。アンディー・アーヴァインやドーナル・ラニーが気安く僕と話してくれるからと云って、彼等が僕にとって、偉大な音楽の師匠であることは永遠に変わらない。会場にふらりと現れた友部正人さんと久しぶりに再会し、ウディー・ガスリーの話をしながら、至福の時間を過ごし、駐車場の門限を過ぎて、家に帰れなくなる。サムズ・アップのオーナー、サフさんが愛車サーブを貸してくれなかったら、俺は横浜でrain dogになるところだった。
 
 無粋な男から電話があり、限りなく不快になる。そして男は友人をひとり失った。

 水曜日。吉祥寺でモザイクのオープニングをリクオと努める。演奏の中に感謝の気持ちを込める。今日に至る道程の中で、彼等からもらったものは計り知れない。その励ましも、叱咤も、音楽の素晴らしさも、すべて胸の中にある。彼等はヨーロッパに向けて旅立った。これから9日連続の公演なのだと。その情熱に頭が下がる。

 友部さんから新しいアルバム「歯車とスモークドサーモン」を頂いた。音楽を聞く前に、歌詞カードに刻まれた言葉を読んだだけで、思わずのけぞる。「年を取ることは ----- 誰の真似もしたくなくなる」。とてつもない詩人だ。近年、俺は言葉について、あえて深く考えないようにしてきた。言葉がメロディーを必ずブチ壊すから。でも、その可能性についてもう一度考えてみようと思う。
 

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by 山口 洋