まじ、怖かったす、宇都宮

2008/08/28, 17:56 | 固定リンク

8月28日 木曜日 嵐 

 東京を出た時から、観たことのないような空だった。それでも俺はタカをくくっていた。俺とて、いろんな修羅場を乗り越えてはきたのだ。この程度の天候なら、何とかなるだろう、と。

 宇都宮まであと百キロを残して、雨は尋常ではなくなってきた。こりゃ、どう考えても通行止だろ、そう思った。まずは車線が見えない、ワイパー殆ど意味なし。バケツをひっくり返したような大雨。高速道路と云うよりは池の中を走っている感覚。かすかに視認できる前の車のテールライトだけが頼り。30キロ以上出せない。でも、俺はプロだ。こんな無茶苦茶な天気で、オーディエンスなんて来る訳がない。それでも行かなきゃならない。真面目に身の危険を感じた。そういえば、前回の宇都宮は台風だったなぁ。俺、呪われてんのかなぁ。背中に汗をたっぷりかいて、どうにか、こうにかたどり着いた。ふーっ。

 決して大入りとは云えなかったが、それでもオーディエンスは来てくれた。聞けば、かなり遠方からも。ってことは、だよ。時間帯が違うとは云え、少なからず、あの雨の中、決死の覚悟でやってきてくれたって訳だ。ここで燃えなきゃ男じゃねーだろ、九州人。と、アッパーな演奏をしていたら、今度は俺の愛機、ヤイリ君の3弦のペグ(糸巻き)が完全に壊れた。調弦不可能。これが出来ないってことは、死活問題なのだが、それでもやるしかない。多分、オーディエンスには分からなかったと思うが、だんだん下がっていくチューニングに全体を合わせた。だから、いつものキーでは歌えなかった。何とかなるもんだなぁ、と少し自分に感嘆。でも最後の曲で、嫌な音がして、ペグとしての機能を完全に失った。アーメン。続いて、感電。リハの時も感じてはいたが、マイクに唇が触れる度に、かなりの電流が流れる。通常、電極を逆にすれば解決するのだが、それも叶わず。でも、やるしかない。雨に打たれた挙げ句、感電かよーーー。

 でもね、俺は思ったのだ。こんな天候の中でも「音楽」を求めてきてくれたオーディンスにはハッピーになって欲しい。昔だったら、自分に意味もなくキレてたところだが、踏ん張った。それを可能にしてくれたのは、オーディンスのエネルギーとハコの主人の想いだった。ありがとう。

 蛇足だけれど、この天候のせいで、物販のスタッフも来れなかった。余剰人員って、それ、俺だけでしょ?この場合。何事も経験だと、終演後、俺が物販のブースに立つことにした。人生初。慣れないから大変だったけど、みんなが働いたお金で、こうやってCDが売れていくのを実際に観るのは悪くなかった。

 はい。そんな訳で、凄まじい一日でした。ホテルに戻って、ほぼ秒殺。気がついたら、何も喰っていなかった。でもね、得たものはたくさんあったのです。「これに懲りないで、宇都宮にまた来てくださいね」って。もちろんですとも。今度こそ、晴天の下で。でも、二度あることは三度あるってか?後から聞いたんだけど、あの凄まじい雨、一時間に100ミリ降ってたんだって。お願いします。あれで事故が起こらなかったのは奇蹟っすよ。

 みんな無事に家に帰ったかーー?

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by 山口 洋