歌うこと

2008/12/22, 00:48 | 固定リンク

12月22日 月曜日 曇り 

 たくさんのリクエスト、ありがとう。
 先日、僕の前にヒートウェイヴでヴォーカルをやっていた中原英司に会って思い出したんだけれど、僕は歌いたくてシンガーになった訳じゃない。もちろん音楽は大好きだったけれど、自分がスポットライトを浴びて歌うことに、まったく興味はなくて、素晴らしいシンガーの横で、ザクザクと(キース・リチャードみたいに)キレのよいリズムギターを弾いていれれば、それで良かった。曲を書くのは好きだったけれど、作詞は中原が担当していたし、歌詞を書くことになるなんて、まったく考えてもいなかった。
 ところがどっこい、僕が21歳の頃。ライヴの前の日に中原が辞めた。地元じゃそこそこ人気も出ていたので、キャンセルする訳にはいかなかった。仕方がないから、僕が歌ったら(いや、あれは歌じゃなかった、多分。思い出したくもないが)、客席から「金返せ!」と罵声が飛んできた。その瞬間、「歌う」ことに真剣に取り組んでみるか、と思った。それからだ。僕のギターが誰かに褒められるようになったのは。歌うことに必死で、ギターのことなんて何も考えちゃいない。その余裕がない。誰も歌を褒めてはくれないが、ギターは褒められる。そうか「手放せば」いいのか。そう気がついてから20年あまり。先日のツアーでリクオのピアノと歌だけっちゅー(たった1曲だけど)状況で歌ってみて、ようやくその意味が身体で分かってきた気がするのです。
 学ぶってことは、かように時間がかかることなのだけれど、バンドも僕自身も前進を続けています。久しぶりに会うバンドのメンバーと音を出すのを楽しみにしています。

by 山口 洋