鎮魂と老いの中の少女

2009/09/25, 15:15 | 固定リンク

9月25日 金曜日 晴れ 

 永い間、浮かばれなかった魂たちを、古寺の老師に供養してもらうため、古都に出向いた。縁がなければ、あり得ないことだ。一睡もしていなかったし、まるで夏に戻ったような陽気にスーツはたまらなく堪えたけれど、オレにとってはひどく大切なセレモニーだったから、心を整えて、臨んだ。蝉が名残り惜しそうに鳴く中、読経が天にループしていく。額から流れる汗を感じながら、ひとつの誓いを立てた。これで何かが始まった訳でも、終わった訳でもない。けれど、心のつかえが少しだけ軽くなったのと、その存在をいつまでも忘れることなく、たとえ無宗教でも、自分なりの祈りを毎日ささげようと思う。

 列席してくれた人々の中に、80歳のおばあさんと、その娘さんが居た。手を引かれて歩いているおばあさんの後ろ姿が少女のように美しかった。オレはもう自分の親にこのようなことは出来ないのだけれど、見ず知らずの人にだって、誰にだって、このようなことは当たり前に出来るじゃないか、と思った。老いて、そして純粋なそのまなざしは観ていて、飽きなかった。人生は不思議だ。さぁ、走るぜ。

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by 山口 洋