ホームラン、島根県出雲市にて

2009/10/09, 13:05 | 固定リンク

10月9日 金曜日 

 奈良で目覚めて、朝露に濡れた道を二月堂まで走った。いにしえの道を走るのは格別。たとえどんなに睡眠不足だったとしても。早い時間に奈良を出て、約350キロ。出雲を目指した。独り旅のお供はこいつ(写真参照)。陽が落ちる前に出雲大社に行きたかったから。一日のうちに、奈良と出雲。贅沢だ、と自分でも思う。現代の寅さんの特権かもしれんね。感謝しよう。
 ところで、出雲にはもうひとつ用事があった。顔の真ん中に乗っかっている眼鏡を買うこと。いつも買っていた東京の老舗の眼鏡屋が最近?なことが多すぎて、ならば、根性と愛を持って、日本の製品を扱っている古くからの友人ケンタの店で、奴に全てを任せてみようと前々から思っていたのだ。奴の店、シマネヤは出雲大社の参道沿いにある。眼鏡屋なんだけれど、オレのCDも置いてある。眼鏡産業もユニクロよろしく、外国産の安価な製品に押されて大変な状況になっている。日本の眼鏡の殆どを生産してきた福井県鯖江市も、いわずもがな。で、奴はシフトした。特化したのだ。安価なものを大量に売るのではなく、奴の「眼鏡」にかなった作家のものを自力で仕入れて売る。オレが店に到着したなら、おかんがコーヒーを買ってきてくれた。そして、奴の親父さんの代から使っている古いけれど、素晴らしい器具でオレの視力を計り、眼鏡を作ってくれた。プロに任せてモノを買う。何だか、当たり前のことが嬉しい。そして、こういうコミュニケーションが今や懐かしい。店を構える者の膨大な商品知識。それって、当たり前のことだったと思うのだが。走る時にズレない眼鏡。そして日常で使用する、かけ心地のよい眼鏡。ふたつ。それらが出来上がるのは今月末。奴がついでに東京まで配達してくれるのだと。この時間のかかりようも何だか嬉しい。もしも不具合が生じたのなら、ちゃんと眼鏡の事を知っている東京の眼鏡屋に話を通しておくので、そこに遠慮なく行って欲しい。云々。おぬしはプロじゃ。素晴らしい。

 いつの間にか、オレのジーンズは札幌から、野菜はときどき函館や長野や徳島から、ジュエリーは代官山から、歯の治療は宮城県で、そして眼鏡は島根県、エトセトラ。全国を廻っているうちに、こんなことになってきたのだが、プロの道はすべて同じところに通じていると思う。

 ケンタがオレの眼鏡のもろもろのことをやってくれているうちに、オレは出雲大社に行った。お願いはしない。虫が良すぎるから。でも、伝えたい感謝の気持ちがあったから、それを伝えた。神有月。悪くなかった。

 それからケンタとオレは大病を患って入院中の友人の見舞いに大学病院へ。病とは闘わず、共に生きて必ず帰ってこい。奴が一時帰宅を許され、おかんの手料理を喰ったとき、「自分のおかんは料理の鉄人だと思った」っちゅー話にぐっと来たぜ。「ヒロシさん、明日のライヴでベーブルースみたいにホームラン打ってください」と奴が云うので、オレのホームランって何だろ、と考えたのだが。ままよ、いつだって全力だけど、明日はお前のために一曲歌うぜ。Life goes on!

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by 山口 洋