街と人と暮らしと音楽、国内某所にて

2009/10/18, 15:12 | 固定リンク

10月18日 日曜日 快晴 

 晴れた。気分がいい。

 いつも出勤しているバーでお忍びライヴ。10キロ走って、楽器を店に運びに行ったら、マスターが獅子奮迅の働きっぷり。何せ、普段はバーな訳だから、ライヴをやる時にはとんでもなく大変なのだ。頭下がるわ。本当に。これが「愛」だよ。

 オレはこの街でノーウェアマンとして静かに暮らしていた。出来るだけ自分の職業は伏せて、どこでもない男として、街に埋没していたかった。観察するだけの男として。でも、今年になっていろんなことがあって、一人でこの店に出勤するようになって、あっと云う間にたくさんの友人ができた。キツいツアーから帰ってきても、いつだってフツーに迎えてくれる。焼きたてのパンや、切り干し大根や、ひじきや味噌なんて差し入れられたりもする。えっと、昨日は地鶏と馬刺もらったっけ。ありがとね。暮らしの中で音楽をフツーに楽しんでいる人たちが沢山居て、オレの職業はミュージシャンな訳だから、恩返しをするとしたら、音楽しかないじゃん。この空間がなかったら、オレはずっと穴の底に落ちたままだっただろう。だから、通称リズム刑事(命名山口洋 - 写真参照。とてもナイスな奴)にはリズムの取り方を伝え、サーファー兼ギタリストで、オレのマラソンのライバルには弦の張り方と狂わないチューニングの方法を伝え、ギターを弾きたいと云うキュートな二人組とは、ほぼ毎晩一緒に演奏してきた。その昔、尊敬するドーナル・ラニーに云われたのだ。「ヒロシ、いいか。お前がどんなにアマチュアのミュージシャンと演奏しようが、そいつがどんなにヘタクソだろうが、お前が何も学ばないってことはないんだ。だから、音楽家として、お前の役目はそういう人々に音楽の素晴らしさを伝えることでもある。お前はそれができる人間だし、そんな機会があったら、面倒くさがらずに、全力でやれ。それが結果的にお前の能力を高めることになるし、そもそも音楽はそうやって発展してきたんだ」、と。

 な訳で、可愛い二人組とも一緒に演奏することにした。そりゃ緊張するわな。人前で演奏するの初めてだしね。でもこの二人組がこの一ヶ月半、どれだけ練習してきたか、オレはよーく知っていた。走った距離は裏切らない。まぁ、実に初々しい。もはやオレが失ってしまった音楽への瑞々しい気持ちに満ちていた。オーディエンスに歌詞カードを配って、みんなが歌ってくれた。曲の名前は「孤独の旅路」。おいおい。でも誰だってheart of goldを探してるのだ。ドーナル、やっぱりあなたが云う通りで、学んでるのはオレの方だったよ。 

 少しだけ、街や人に恩返しが出来たような、そんな気持ち。ありがとね、楽しかったよ。

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by 山口 洋