「カンテラ」に寄せて

2009/10/26, 12:49 | 固定リンク

10月26日 月曜日 雨 

 青森県弘前市のロックシンガー、アキラから段ボールが届いた。開けてみると、そこには今年のリンゴと彼のバンドcreepsの試聴盤が入っていた。今まで無数にサンプル盤が送られてきたが、リンゴが入っていたのは初めてだ。何だか、いいね、こういうの。さっそくライナーを書かせてもらった。冬になったら、スキーを抱えて遊びにいくぜ。それまで元気でな。以下、ライナー。

 竹内晃とは何度も東北を旅したことがある。彼がステージに上がって歌う度に、目の前に弘前の情景が広がってくる。情けなくてチンケな(褒めてますから)野郎どもの日々が短編映画のように浮かび上がってくる。決して上手くはない。でっかいギルドのギターも弾いていると云うよりは、そのデカさに翻弄されているような。でも、それがいい。
 僕は音楽にイケてる要素なんて、何も求めてはいない。三味線の音を聞いたから、すなわち青森を感じるのでもない。けれど、このアルバムの奥底には、津軽の男どもの、そこはかとない優しさがある。厳しい冬と、日々を生き抜いた者たちの歌に嘘はない。試聴盤の入った段ボールにはリンゴが同封されていた。開けると、部屋に弘前の匂いが広がっていく。僕は今日、いつもバーにリンゴを持っていって、みんなで食べようと思う。そんな風にcreepsの「カンテラ」が広がっていくことを、僕は夢想するし、それは決して実現できない夢ではない。

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by 山口 洋