born to run、確かな光、ハーフマラソン完走

2009/11/01, 13:26 | 固定リンク

11月1日 日曜日 晴れ 

 レース当日。 
 実のことを云うと、柄にもなくキンチョーして、あまり眠れなかった。朝、サプリメントを飲むのも忘れたし、大嫌いなバナナも買ってあったのに、喰うのを忘れた。何だか今日のオレはヘンだ。結果を出せずに、積み重ねてきたことが無になるのが怖かったのか、おまけに昨日から新しい膝痛にも悩まされていた。でも、さすがにあれだけのライヴをやってきたからだろうか、最後にはなるようにしかならん、お前は出来ることを全部やってきたんだから自信を持て、開き直った。目標はまずは完走。どんなトラブルがあっても絶対に諦めないこと。そしてあわよくば、2時間を切ること。でも、オレは自主的にハーフを4,5回走ったが、最高のタイムは2時間12分なのだ。つまり12分以上短縮しなければならない。ハードルは決して低くはない。

 今日は編集者のS君、そしてしょっちゅう一緒に飲んだくれてるヨシミ君と参戦。S君はモノが違うのだ。こっちはリトルリーグ、彼は社会人野球みたいな。で、ヨシミ(呼び捨て)。オレはこの街で一番根性があると自負していたが、奴のそれも結構とんでもない。どんなに仕事で疲れていても練習は欠かさない。やると決めたら絶対に諦めない。何なんだ、こいつの根性は?と常々感じていたら、奴は元ボクサーだった。はよ、云わんかい、それ。

 午前8時20分。スタート。とんでもない風が吹いている。海風が砂を巻き上げ、まっすぐ走るのも難しいほど。オレは毎日このコースを走っているけれど、こんな悪条件は初めてだ。吹き付ける砂で身体は痛いし、だいいち目を開けることも難しい。ランナーの顔の汗には砂が張り付いて、全員ゾンビみたいになっている。あのS君がズルズルとペースを落としている。おおっ。オレのトレーニングも無駄じゃなかったのね、と一時は彼を抜いたりもした。でもラップを確認すると、1キロを4分台で走っている。どう考えても、オレには速過ぎる。案の定、足にきた。しまった、速すぎたか。S君にもヨシミ(再び呼び捨て)にも軽々と抜かれ、オレは息も絶え絶えになっていった。でも、積み重ねてきたことは無駄じゃなかった。このままどうにか10キロ持ちこたえたら、折り返しの頃には体力が恢復してるだろう。そして最後の7キロはド根性あるのみだ。折り返しでS君とすれ違う。爽やかな笑顔。こりゃ無理だ。そしてヨシミ。奴との差は700メートル。頭の中で「London calling」が鳴った。にゃろめー、絶対追いついてやる。折り返して、猛然とスパートした(あくまでもオレの中での話)。一キロを5分台前半で走れば、2時間を切るのも夢じゃない。オレはヨシミの名前を勝手に「エナミー・ヨシミ」に変えた。仮想敵だ。もちろん積み重ねてきた「感謝」も忘れなかったけれど。それからは快調に走れた。キツさと妙な気持ちよさで、何だか訳が分からなくなってきた。何が自分を動かしてるのか分からないけれど、確かに光を見て、実はちょっと泣けた。そして頭の中のBGMはベタで申し訳ないけれど「born to run」に変わっていた。今までに体験したことのないヘンな感動をしながら走っていた。そしてゴール。エナミー・ヨシミには遂に追いつけなかったが、わずか3秒差。1時間55分27秒。もう歩く気力も残っていなかった。

 街の友人達が応援に来てくれて、浜辺でヘナヘナと座り込んだまま、ヨシミと飲んだビールは美味かった。もう奴は敵ではない。自分の記録を17分短縮したんだから、少しくらいは褒めてやろう。そしてヨシミとオレは次のステージを目指す。今年中に奴と自主的42.195キロに挑戦してみようと思う。レースではなく。ロック・ミュージシャンのマラソン日記に長々とつきあってくれてありがとう。さぁ、今日はゆっくり休んだら、いよいよツアーに出るぜ。

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by 山口 洋