人と音楽、鎌倉にて

2009/11/02, 19:49 | 固定リンク

11月2日 月曜日 雨 

 昨日レースを終えて、砂まみれの身体をきれいにした。さぁ、切り替えよう。そんな時は真っ白いスーツを着る。それから、オレは友人達と鎌倉の教会で行われたゴスペル・クワイアーのライヴに行った。飲み友達のお菓子屋のボンが出演しているからだ。日本で、しかも鎌倉でゴスペル。本物のそれを目の当たりにしたことがあるオレとしては、正直なところ、今ひとつピンと来ていなかったのも事実。でも、そのライヴは素晴らしかった。正直言って、そんなに上手くはない。でも、常々思うのだが、人の心を動かすのは技術だけじゃない。彼らには「歌いたくてたまらん」と云う一番大事な動機があった。オレもそれを忘れないようにしなければ。そのチームは来るものは決して拒まず、去る者は追わない。そして、信者であろうが、なかろうが、歌いたければ誰だって入れる。その日本的にアレンジされた、ゆるい「規範」も好きだった。ところでお菓子屋のボンは冒頭でソロを取った。そのハジケっぷりと、最後まで声が持たないところと、満面の笑顔。良かったねぇ。ちょっとグッと来たよ。オレは子供の運動会(行ったことないし、子供も居ないけど)に行って、応援してるような気持ちだった。いやはや、何と云うか、ありがとう。街と人々と暮らしと音楽。オレの前に座っていたのはお坊さんと外人。教会にお坊さん。坊主頭がゴスペルで揺れている。いい眺めだったよ。
 それからKの店に行った。奴は地元の音楽的な名士でもある。一言で云えば、骨のある男。奴と音楽、そして社会やヒロシマの話をした。オレにはヒロシマのどうにかしなきゃならんけど、どうにもならないプロジェクトがある。奴は被爆二世だった。ふむ、もう出版社に話をするのは止めて、こういう骨のある男と行動を起こした方がいいのかもしれん、と思った。

 ところで。ベランダに毎日猫がやってくる。頼みもしないのに、やってくる。昔、このような状況から二匹、猫を飼ったことがあるオレは、心はぐらんぐらんに揺れるのだが、残念ながらしょっちゅう旅に出る身なのだ。だから、お前を甘やかすことは出来んし、餌はやれん。許してくれ。こうして、毎日ヘンなにらみ合いは続いている。

 レースの疲労を取ろうと、ゆっくり走り出した。小雨混じりの中、タイムを気にせず走るのは気持ち良かった。今まで支えてくれたコースや海や曇天や人々に感謝していたら、あっと云う間にハーフを走っていた。気持ち良かった。

 明日からいよいよツアーのリハーサルが始まる。全ての楽器を整備した。楽器車に積み込まれる前に、見渡して。随分減ったなぁ、と思う。とっかえひっかえ楽器を使っていた頃の半分以下の量だと思う。それも旅の成果なんだろう。ディランの30周年ライヴにはスティーブ・クロッパーとG.E.スミスと云う二人のギタリストが居た。G.E.スミスがゲストに合わせて、殆ど毎曲ギターを換えていたのに比べて、スティーヴ・クロッパーは最初から最後までずっと同じ一本のギターだった。できれば、そんな風になりたいと思う。

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by 山口 洋