満天の星

2009/11/24, 19:22 | 固定リンク

11月24日 火曜日 晴れ 

 昨夜はオレが国内で見た夜空の中で、一番美しい夜だった。澄んだ空気に輝く満天の星。オリオンが立体的に見えて、その間に無数の星屑が散りばめられている。言語化不能。たくさんの流れ星がひとつひとつのチャプターの終わりと始まりを告げているようで、観客はオレひとりの天体ショーを、寒さも忘れて見とれていた。最近訃報が相次いだ。本当に今年は沢山の人や動物を見送った。そのひとりひとりと静かに会話ができた。やがて、自分の宇宙と外の宇宙の何処に境があったのか分からなくなる。多分、それらは繋がっているんだと思う。人は自分を愛で満たしていれば、宇宙的な愛を受け取ることもできるし、それを送り返すこともできる。そして大切なものは心から失われない。人は一人だけれど、決して独りではない。誰かが云ってたように、時間はただの概念に過ぎないと、この頃思う。

 高地トレーニング、二日目。標高1000メートルの20キロのアップダウンは本当に堪える。巻物にはクロスカントリーでもイーブンペースで走るようにと書いてあるが、そんなの無理。心臓が破れる。さまざまな巻物を読んで、休養もひとつのトレーニングだってことが身にしみて分かりつつある。これまでは蓄積した疲労を根性で乗り越えようとしてきたが、破壊された細胞を生まれ変わらせるためには休むしかないらしい。

 走っている間に、メロディーと歌詞が同時に降ってきた。忘れないように家に戻るのは難しかったけれど、ようやくいろんなことが実を結んできた気がしている。

 夕方。山を降りて、麓の街まで50キロ。ライヴを観に行った。SION & 松田文さん、SAICO、そして鮫。鮫の全編熊本弁はとても好きだった。SAICOのギターは瑞々しい音がした。紫陽花についた雫のような音。もうあの音はオレには出せない。SIONの歌は、自分の手を汚して闘ってきた男にしか歌えないものだった。ぐっと来た。松田さんのギターはとても繊細だった。同じ時代に生きて、新しい歌を紡いでくれていることが本当に嬉しかった。オレも頑張らなきゃ、と心から思った。いいエネルギーをもらったら、オレは出来るだけ一人になりたくなる。楽屋に寄って、挨拶をして、帰りの50キロ「このままが」とダミ声で歌いながら帰った。濃い霧で20メートルの視界でも、「オレもたまには自分を褒めてやろう」と思った。いい時間だった。心から感謝を。

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by 山口 洋