走った距離は裏切らない。自主的フル・マラソン完走

2009/12/12, 03:05 | 固定リンク

12月12日 土曜日 晴れ 

 自主的にフル・マラソンをやるバカ者はこの世には殆ど居ないのだと。やったとしても、せいぜい30キロ走。あまりに身体的リスクが高いし、モチベーションを保つのが難しいから。でも、幸か不幸かオレとヨシミはそんな人間だった。オレたちは11時ちょうどににそれを始めた。先週のハーフで、ヨシミは1キロのラップを4分50秒で、オレは5分5秒で走りきった。どんなに頑張っても、それ以上はオレには無理だった。うちひしがれた。勝てないのだ。奴のあのスピードには。でも、30キロから先は二人にとって未知の世界。だから、今日は1キロのラップを6分30秒に設定した。それなら、最後まで走れるはずだ。どんなにキツくても。そのタイムで走り続ければ、ゴールのタイムは4時間30分になる。ところが、走り始めて気づいた。6分30秒はさすがに遅すぎる。だから、30秒上げて、6分のラップでフル・マラソンを目指すことにした。これはレースではない。42キロがどれほどの道のりなのか、それを互いに知りたかっただけだ。5キロ、10キロ、15キロ、20キロ、25キロ、30キロ。30キロの時点で我々は3時間を切っていた。さすがに練習の甲斐あって、息を切らすことなく同じラップを刻んでいける。さぁ、ここからが未知の領域。ところが32キロを過ぎたあたりで、ヨシミに異変が起きた。今までのレースでは0勝3敗。まったく歯が立たなかったあのヨシミがズルズルと遅れていく。オレも決して楽ではないけれど、ラップはキープできる。いろいろ考えた末、オレは自分のラップをキープすることにした。振り返ると奴はもう見えない。36キロで最後の折り返し。そこからはヨシミが居ようと居まいと自分との闘いだ。とにかくラップだけは落としたくなかった。すれ違ったヨシミは息も絶え絶えで走っている。その差約1.5キロ。何が起きたのか、分からないけれど、すまん、オレはオレの道をいく。先日のハーフの地獄のような苦しさに比べれば、35キロ過ぎの疲労も大したことはなかった。何とかラップはキープできた。さすがに走るのがもう嫌になってはいたけれど。最後の5キロくらいは何を考えていたのか、覚えていない。多分、無に近い状態だったんだと思う。遂にゴールにたどり着いた。4時間11分。レースではないのに、まずまずだと思う。平均ラップ5分56秒。最後までそれが落ちることはなかった。
 待てど暮らせど、ヨシミは帰ってこない。奴は5時間経って帰ってきた。足が4回つったのだと。あの根性ものが歩くなんてあり得ないことだ。多分、限界だったんだと思う。マラソンが面白いのは、根性だけではどうにもならないところ。レースになれば何とかなるだろうってことはあり得ない。誰かの言葉の通り、走った距離は裏切らない。緻密な作戦と絶え間ない努力がなければ、我々みたいな凡人が4時間の壁を破るのは難しい。今日だって、たまたまオレは足がつらなかっただけのことかもしれないし。とにかく、あと11分だ。不可能なことではない。でも慢心すれば、不可能だろう。でも、初めて走りきった42.195キロは決して手の届かない距離ではなかった。
 今日はレースではない。だから、オレは奴に1勝をあげた訳じゃない。でも、奴も学んだだろう。何も考えず走っていれば、必ず失速する。その位には充分に厳しい。周囲に惑わされず、自分のポテンシャルを知って、均等に配分して走り走り抜けなければ、目標を達成することは難しい。
 本番のレースまで、あと3ヶ月ある。到底不可能だと思ったことを、実現するためにあと、3ヶ月ある。頑張れば、何とかなるところまでは来たと思う。でも、ヨシミが居てくれて良かった。先週、死ぬ気で走って、奴に完膚なきまでに負けて、オレは気持ちが折れかかった。でも、そこから這い上がってきて、多分、今日奴の方が折れた。一人じゃ、ここまで来ることすら無理だったと思う。オレ達が目的を達成しからと云って、何がしかの金がや名誉がもたらされる訳じゃない。だからこそ、光のためにまっすぐに頑張れるんだと思う。
 奴と焼き肉屋に行って、しこたま喰った。なぁ、無駄な努力は決して無駄じゃないよな。一銭にもならないことに、夢中になれる自分たちがそんなに嫌いじゃない。それは金には換えられないと思うよ。

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by 山口 洋