したたかに、でもまっすぐであること

2010/01/26, 13:23 | 固定リンク

1月25日 月曜日 晴れ 

 「音楽で街を元気にしたい」。オレはその街に恩義があったし、オファーに賛同したから、地域限定ユニットで出演するために、飛行機でトンボ帰りした。最近、とみにそのようなオファーが増えた。先日の福岡のイベントもそうだし、ミュージシャンは単に音楽をやるだけではないことが求められる。それは結構。ただし、その意思を「まっすぐに」貫くことは簡単ではないし、やるなら「本気」でやらなければ、ただの「仲良し倶楽部」で終わりになる。オレが街に育てられたように、関わっているニンゲンたちも同じだ。たまには嫌われることも覚悟で、云いたくないことも云わねばならない。
 会場に着いて、リクオが弾くピアノが用意されていず、PAオペレイターがあまりにも要領を得ないところで、オレはキレた。ふざけるな。やるなら、本気でやれ。キツい仕事を終えて、働いた金でやってきたオーディエンスをこんなに狭いところにギュウギュウに詰め込んで、ロクにステージも見えない状況って一体何だ?だいいち、それをネットで配信するなら、オーディエンスのマイクぐらい立てておけ。臨場感もクソもないだろ。こんなレベルでやっているから、地方の音楽はナメられるのだ。
 関わった人間たちの、ひとつひとつの溢れる想いの集合体が音楽を作る。それがオーディエンスをハッピーにする。その技量がないのなら、あり余る情熱でどうにかカバーしろ。無意味なところだけ、妙にプロっぽい振る舞いは大嫌いだ。「したたかに、でもまっすぐであれ」。オレは久しぶりに本気で怒った。街の音楽を取り巻く状況を良くしたかったからだ。そのために帰ってきたからだ。願わくば、伝わっていることを祈る。
 ミュージシャンたちは百戦錬磨。その状況を受け入れて、ベストを尽くしていた。客席の表情も次第に笑顔に変わっていった。でも、新しいメンバーも加わったことだし、またやろう。お互い足りないものは反省して。音楽の奇蹟を、この時代を生きる人々にちゃんと伝えようじゃないか。

by 山口 洋