脱皮

2010/03/03, 23:02 | 固定リンク

3月3日 水曜日 晴れ 

 食事中の読者は、食事が終わってしばらくしてから読むことを勧めます。

 練習から帰ってきて、砂まみれの靴下を脱いだとき。「めきっ」と可愛い音がして、死んでいた5本の足の爪のうち、最後まで残っていた爪が剥がれました。こう書くと、痛そうですけど、まったく痛くありません。10本のうち半分の爪を失うことに関して、さんざん脅されましたが、ぜんぜん大丈夫です。靴さえ気を使えば、何の不自由もなく走れます。たまに机の角やなんかで、爪のない指先をぶつけたりすると、痛いくらいです。ただし、失った爪の下の風景は、何とも形容し難いもので、それを写真に撮って、公開するのははばかります。「大丈夫。すぐ生えてくるよ」なんて云った人は多分、爪を剥がした経験がないんだと思います。いっこうに生えてくる気配はありません。ところで、後生大事に取っておいた訳じゃないすけど、剥がれた爪(写真参照)って、結構きれいなんすよ。不潔でいて、高潔。みたいな。光にかざすと、深いパープルだったりするのです。

 そうそう。「ディランに会えるかもよ」と連絡をもらって、色めきたったものの、自分のスケジュールを確認して、がっくし。その日は遠い場所でライヴでした。アーメン。あの、「会う」とはサインをもらったり、写真を撮ったりすることではないのです。分かるよね?人間同士が出会うってことです。ヴァン・モリソンの時は自分で断りました。何故なら、僕はレコードを買うファンの立場で「永遠に」居たいと思ったからです。彼の性格なんて知りたくもなかった。でも、ディランは「あの深い目」を見てみたかった。どれだけ深いのか。でも、つまりは縁がなかったってことです。最近つくづく思うのだけれど、「会いたい」と強く願い、そこにまっとうな理由があって、かつそれに見合うだけの努力をしていれば、必ず「会う」ことが出来ます。本当に。まったく宇宙ってどうなってんだ、と自分でも不思議に思うけれど。ポジティヴな想いは連鎖して、それを引き寄せるのです。同じように、ネガティヴな想いを吐き出していると、いつかそれは自分を滅ぼす刃となって向かってきます。これも本当です。って俺がこの手の事を記す必要もないので、このへんで。「夕食バンザイでした。スタジオにお返しします」。

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by 山口 洋