シークレットライヴ、九州某県山中にて

2010/04/17, 19:00 | 固定リンク

4月17日 土曜日 晴れ 

 九州某県の山の中に、いつだって僕をフツーに迎え入れてくれる村落がある。そこでは伝統的な焼き物が作られている。連中と知り合ったいきさつは長くなるから割愛するとして、都会暮らしに疲れると、僕はいつもアポなして、ここへやってくる。玄関に鍵もかかっていないので、勝手に上がり込んで、日本家屋でゴロゴロして、上げ膳据え膳でいつの間にかしっかり元気にしてもらって、僕はまた都会に戻る。こう書いてみると、随分ヒドい人間だね、オレ。
 僕に出来ることは、音楽を届けて、人々に元気になってもらうことだけ。だから、ほぼ村人限定で、古い保育園の体育館を借りて、ライヴをやる。田舎では、そのような行事は村人総出で催される。ノウハウは次のジェネレーションに引き継がれていく。焼き鳥を焼く若者、村のパン屋さん、酒屋、若い連中は交通整理に精を出す。開演時間が近づくと、老若男女がワラワラと集まってくる。ほぼ満員。実のところ、このようなライヴの方がミュージシャンにとってはハードルが高い。だって、日頃、音楽を聞かない人や、聞いていたとしても初めて僕の音楽に触れる人だらけだし、小中学生が聞いているような音楽を僕は知らないし。要するに総合的な「人間力」の勝負だからね。
 ちょっと前までなら、「どげんかせんといかん」と主催者の気持ちまで背負いすぎて空廻っていたと思う。でも、僕はどっちに転んでも僕以上でも以下でもないんであって、「背負わないこと」を「背負える」ようになったと思う。まっすぐに音楽に向かって、その空気を楽しんでいれば、人々には伝わるさ。村人の反応はそれぞれで、ミュージシャンになって良かった、と心から思った。
 心を砕いて呼んでくれて、ありがとう。実のところ、エネルギーをもらっているのは僕の方だった。小さなコミュニティーゆえ、これだけの人を集めて、ライヴを開催するのがどのようなことか、僕にもあらかた理解できる。胸には、澄んだ空気と、人々の想いと、美味しい食べ物と、腹がちぎれそうなほど笑った会話と(あんなに笑ったのは久しぶりだよ)、チャージされたよ。多謝&再見。

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by 山口 洋