2010/04/18, 22:03 | 固定リンク

4月18日 日曜日 雨 

 ライヴを主催してくれた人々は、山を下ったところにある街の高級旅館に宿を用意してくれていた。でも「そこに泊まりたくない」と小学生みたいにダダをこねたのは僕。だって、山里にある、あの日本家屋ほど、自分らしく居られる場所はない。ほんとだよ。
 突然の訪問(それも大挙しての)にも関わらず、受け入れてくれ、僕はいつしか心地よさで気絶した。そのまま眠りこけて、夕方の5時まで眠っていた。何があっても起きることはなく、ただただ眠りこける中年を放っておいてくれた。こんなに深く眠ったのはいつ以来なのか、もう思い出せない。小川の音、家族の声、エトセトラ。例えが悪いかもしれないが、徴兵されて、ようやく帰郷したら、こんな気持ちなのかもしれん、と。
 若くして、このような田舎の大家族にやってきた「嫁」と呼ばれる人たちのたくましさ、優しさ、強さ、そして乗り越えてきた数々の難問。それらはおおよそ流れ者の僕には信じ難いものだった。「偉大」だとしか云いようがない。僕がもし女性だったとしたら、到底務まるようなことではない。彼女たちは「なーんも知らんときに、連れてこられたから、耐えるとか、耐えないとかじゃなくて、こうするしかなかったんよ」と笑うのだが、僕にとって、最も尊敬に値する人たちであることは間違いない。
 子供は親の背中を観て育つ。娘たちは「今どき、どうやったらこんな子供が育つん?」ちゅーくらいよく働くし、厳しい修行を終えて、帰ってきた長男はその齢20にして、もう家業に対しての責任感と創作意欲に溢れていた。奴が見事にろくろを回す姿を観て、ちょっと涙腺緩んだぜ、オレ。

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by 山口 洋