Travessia

2010/06/02, 18:39 | 固定リンク

6月2日 水曜日 晴れ 

 昨夜はライヴを終えて、弟分と深く話しました。うっすらと空が明るくなるまで共に時間を過ごしても、もう深酒をすることはありません。それが時間の無駄でしかないことを、ようやく互いに悟ったのです。ホテルに戻ったのは午前4時。ここ数日の移動は半端じゃなかったので、さすがにチェックアウトを12時に延長したのですが、メールをチェックすると「はよー、東京に戻ってこい」との催促多数。ランチの誘いも何もかも断って、9時にはホテルを出て、一路360キロを突っ走ります。
 眠い目をこすりながら聞いていたのは、ミルトン・ナシメントのCD。昨日オープニングで歌ってくれたサダム君がステージに登場する際、流れていた曲があまりに素晴らしかったので、弟分に「そのCD、帰り道に聞くからくれ」、と半ば強奪。それが素晴らしいのなんの。芳醇な音楽の力。猛スピードで流れていく車窓と相まって落涙多数。ポルトガル語が心に刺さったのは初めての経験だったのです。

トラヴェシーア

君が行ってしまった時
僕の人生には夜が来た
僕は強いが どうにもならない
自分の家はもう自分のものではなく
この場所さえも もう僕のものではなく
あまりにも この身は孤独で
耐えられない
語るべきことだけが 溢れてくる

星の闇へ 声を飛ばす
僕はもう留まりたくはないのだ
この道は石ころだらけ
なのに 夢など見られるはずがない
そよ風でできていた夢は
暴風がかき消してしまう
この涙を止め
僕は死を願おうとするだろう

けれども この人生
君を忘れようとしながら 僕は続けていく
もう死はたくさんだ
生きるべきことはたくさんあるはず
もう一度愛を育みたくなるだろう
また それがたとえ不可能でも
傷つくことはないだろう

何故なら もう夢は見ないのだから
自らの腕で
人生を切り開いていくのだから

 この詩が芳醇なサウンドに乗せて歌われるとき、目の前の道に「明日」が本当に見えるのです。 

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by 山口 洋