邂逅

2010/07/09, 14:31 | 固定リンク

7月9日 金曜日 雨 

 一大プロジェクトを終えて、本日NYに帰る兄貴のトシと、朝の8時半から築地で鮨を喰う。というか、ごちそうになる。兄貴も心身ともに疲れてるだろうから、鮨ぐらいごちそうしたかったが、僕がトイレに立った隙に勘定は終っていた。「ex江戸っ子の前でトイレに行っちゃあおしめぇよ」と彼が云ったかどうかはさておき、まったく油断も隙もありゃしない。江戸前の鮨を喰らいながら、我々は実に男の子チックに「直列6気筒」の話なんかをしていたのであるが、多分、互いの人生の目的を語らないうちに語っていたのだと思う。気恥ずかしさを承知で書くなら、社会を良くしたいのだ。本気だよ。そのためには自分が「ひかり」にならなければならない。そんなことを本当の意味で第一義的に考えられる人間はそうは居ない。だから、彼は僕の永遠の兄貴なのだと思う。何度でも書くけれど、彼に会わなければ僕の人生はもっとeasyなものだったと思う。けれど、後悔はしていない。
 昨年は確か浅草で蕎麦を喰ったあと、ランニングタイツ - CWX - 通称ウシの話になり、そのままお茶の水のスポーツ店に行って強引に試着させられ、僕はウシストになり、そのウシの伝道者になったのが、今日は彼が首にファイテンを装着しているのを発見して、そのままファイテンショップに直行し、新製品ファイテン100Xをプレゼントした。うしし、格好悪っ。まったく強いんだか、弱いんだか。希代の根性者も寄る年波には勝てないのか。じゃ、来年はアシックス・ストアに行って靴をプレゼントしますからね。どうか身体に気をつけて。

 ボックスセットのクレジットを書いていて、編集担当のS君から「当時のエピック・ソニーの社長だった丸山茂雄さんの名前、入れましょうよ」と提案され、彼が最近blogを再開されたと聞いた。僕らは丸山さんが社長でなければ契約しなかったと思う。当時25歳だった僕にもびびっと感じる強い「人間力」が彼にはあった。音楽業界にもこのような人物が居るのだという驚き。そしてこのような人物が長を努める会社なら、心から信用できる。いつもの直感がそう云って、実際彼が云った通り「お前らは5年間、好きなように音楽に没頭しろ」。その言葉通りのことをやらせてもらったのだ。だから、永遠の恩義を感じている。10数年振りにお会いしたとき、「お前、柔和ないい顔になったなぁ」と云われた。いろんな荒波を乗り越えて、そのような表情をしているのならば、これは褒め言葉として受け取っておこう、と。素直に喜んだことを覚えている。
 ところで、氏が再開されたblogには彼がこの数年、食道ガンと共生していたことが綴られている。手の施しようがないと宣告され、今日に至るまでの過程が。丸山さんの父上、故丸山千里博士は「丸山ワクチン」の生みの親である。父と子を巡る話は、僕が語るより実際に氏の文章を読んで頂いた方がいいと思う。僕はその文章に深い感銘を受けた。冷静に運命を受け止め、それでいて静かに熱く、社会のために仕事や人生に取り組む。このような人物だからこそ、若い僕は導かれるように彼が長を努める会社と契約するに至ったのだ、と。今更ながら。20年の時を超えて。是非、読んでください。この時代を生き抜くヒントに溢れています。そして、また何処かでお目にかかれることを愉しみにしています。心からの感謝を込めて、丸山さんの名前をボックスセットにクレジットさせて頂こうと思っています。

http://d.hatena.ne.jp/marusan55/20100627
http://vaccine.nms.ac.jp/general/index01.html

by 山口 洋