胴体着陸、三重県亀山市にて

2010/08/22, 13:52 | 固定リンク

8月22日 日曜日 あまりにも晴れ 

 三重県亀山市、僕のともだち、故マサルが営んでいた「月の庭」にて、おおはた君と演奏する。僕らは先日、横浜で素晴らしい演奏を繰り広げたからして、同じライヴは二度とないことは知ってはいるが、二人の演奏に関して何の不安もなかった。
 近頃。「月の庭」近辺で起きたことを詳細に語るのは止めておこうと思う。僕はオカルティックな話がしたい訳ではないから。ただ、奴ならそんなこともあり得るかもなぁ、と僕は苦笑したのだけれど。とにかく、ステージ(あれはステージと呼んでいいのだろうか、機材は土まみれだったな)に上がってからと云うもの、無駄な芸歴30年をもってしても、遭遇したことのない類いのトラブルが次々に勃発した。「何だか、近所ででっかい花火が上がってるなぁ」と思ったら、僕のギターからその音が出ていたり(云っておくけど、僕の信頼しているヤイリギターからこの手のトラブルが発生したことはない)、エトセトラ。遂にはウンともスンとも云わなくなった。さて、どうする?機転をきかせたおおはた君が「ここは僕がソロで何とかしますから」とどうにか一部を終えた。幕間に、何とかギターを復活させようとしたが、もはや手の施しようがなかった。何故音が出ないのか、考えられるあらゆる手を尽くしても、理由はまったく不明のまま。出ないものはどうしようもない。僕らは70年代のフォークデュオのように、生音をマイクで拾い、生まれて初めて椅子に座って、極小の音で演奏するしかなかった。でも、次第にそれに慣れてきた。このままじゃ終われない、その気持ちも強かったし、おおはた君の即興ソングも素晴らしかったし、客席もそれを楽しんでくれていたし。さすが、恐るべしは「月の庭」。演奏を終える頃には妙なカンドーを覚えてさえいた。根拠はないけど、マサルは確かに還っていった。居合わせた全員の力で、確かに奴は還っていったのだ。僕とおおはた君はバックステージに戻り「こりゃ、胴体着陸だね」と云って笑った。不思議な一日だったよ。ありがとう。

by 山口 洋