ハウスダストにまみれる日々

2010/11/17, 01:18 | 固定リンク

11月17日 水曜日 雨 

 ハウスダストにまみれながら、バンド30年分の資料を整理しています。30年の間にたくさんのスタッフ、レコード会社、事務所が入れ替わり、今や全容を把握しているのは僕だけなのです。いつかはやらねば、僕が死んだときに誰かに多大な迷惑をかけることになる。今はきっとそんな時期なんだろうと。別に死ぬことを前提にしてる訳ではありません。ただし、経験で云えば、人はある日この世から突然消えてしまうこともあるのです。父親はある日突然死んで、凄まじい量の学術書を遺しました。彼にとっては貴重な資料でも、僕が読んだら、そこに何が書いてあるのかも不明な書物の山。洒落者だった母親は大量の洋服を遺しました。着れないっつーの。それらを整理しておくのは、一人で生きる者の責任だと思うのです。ただし、本当に面倒くさい。ようやくその作業にメドがついて、今朝の大事な契約の場も忘れて、爆睡していました。ダメじゃん、オレ。

 さて、次は本。多分、数万冊ありました。思ったことを本に書き込む癖があって、売ることもできず、かといって、捨てることもできず、増えるばかり。意を決して、すべてを誰かにもらってもらうべく整理しました。喜んで引き受けてくれる輩が居て、本当に良かった。そんな時、尊敬する作家である宮内勝典さんがご自身の「海亀通信」に僕のことを書いてくれた、とファンから教えられました。嬉しかったのです。「僕は始祖鳥になりたい」がお嫁に行った日に、そんなことがあるなんて。もう随分前のことです。多分、僕は20代だったかな。「宇宙的ナンセンスの時代」にどれだけエネルギーをもらったことか。あの本がなければ、僕は世界を流浪しなかった「かも」しれないし、ネイティヴな人々と出会うこともなかっただろうし、少なくとも幾つかの曲は完成に及ばなかったことは間違いないのです。宮内さん。「僕は原始人になりたい」と本気で思っています。もし、この記述を何処かでお読みになったら、このサイトにあるメールフォームにメールを頂けませんか。できれば新しい作品を聞いて頂きたいのです。

 さて、今日の松本ギャラリー。ステージから見える風景をお届けします。昔は客席を観ていませんでした。怖かったのだと思います。けれど、今は演奏を続けているうちに、オーディエンスの表情がそれぞれに変わっていくのを観ているのが好きです。同じ瞬間に泣いている人も居れば、笑っている人も居ます。受け止め方は様々。僕はそれが好きなのです。

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by 山口 洋