夢の続き
2010/12/10, 01:01 | 固定リンク
12月10日 金曜日 曇り
迷い込んだ道には必ず出口がある。ただし、ここまで来たなら、偶然、迷路から出ることができる、なんてことはない。それは自分が引き寄せた必然で、可能にするのは「情熱」だけだ。今日、一日中、僕や身の回りにはそのようなことが起きていた。
夕刻、東京でwebsiteに関する打ち合わせをした。ミュージシャン、あるいはアーティストのオフィシャル・サイトとしてのあり方に僕は疑問を持っていた。ほぼ、すべてのそれらのページにはtwitterやmy spaceやエトセトラ。それらへのリンクバナーが貼られ、何もかもがあって、何もない気がしていた。音を消してもうるさいテレビに似ていると云うか。断っておくけど、それらを否定している訳じゃない。否定する権利もない。ただ、僕には向いていない。そう感じていた。いろんな人に勧められるけれど、僕はtwitterをやることはないと思う。年がら年中、ネットと繋がっていることに僕には向いていない。けれど、潤沢に資金があるとは決して云えない僕らにとって、ネットは大事なツールでもある。だからこそ、その道のプロたちの会話を聞いているのは面白かった。そして、それらの会話の中で、違う迷路における出口への「きっかけ」を見つけた。
それから僕は千駄木にある友人の古本屋「ほうろう」に足を運んだ。この本屋は本当に素晴らしい。本への愛に溢れている。今日は探していたカズオ・イシグロの本を見つけた。ところで、何故、屋号が「ほうろう」なのか。云うまでもなく小坂忠さんの名盤「ほうろう」に由来している。今回、僕もほんのちょっとだけ、架け橋の一部を担うことができて、今夜「ほうろう」で忠さんが歌う。そりゃ、行かなきゃ。優れたパフォーマーは楽器が少なくても、すべての音が聞こえてくる。本屋の片隅で演奏する忠さんとギタリスト、たった二人の世界から、ハモンドオルガンやドラムや、ホーンまで、僕の耳には聞こえてくる。これこそが僕が目指していることであって、過度に説明しなくても、人は足りないものを勝手に想像力の中で補うのだ。早川義夫さんの名言のように、とかくこの世は「足りないのではなく、何かが多過ぎる」。店主とその妻が落涙している姿を見ていて、僕もぐっと来た。帰りしなに彼らに伝えたのだけれど、これは彼らがメゲずに続けてきたことへのギフトだと思う。忠さんが歌うように、夢には続きがあると僕も思う。諦めない限り。
日付が変わって、新しい家にたどり着き、ベランダから見上げた空にはオリオンが瞬いていた。悪くなかった。
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