ラジオの最終回

2005/12/13, 23:30 | 固定リンク

12月13日 火曜日 とても寒い日 

 夜。都内某スタジオ。9年あまり続いていたラジオの最終回。スタッフが膨大な過去の放送の中から、ハイライトシーンを抜粋しておいてくれた。いや、面白かった。ラジオで無理にしゃべろうとすると、ロクな事がないので、かなりちゃらんぽらんに肩の力を抜いてやってはいたが、我々は音楽に誠実だったんだってことを改めて実感した。俺たちはラジオで育った。番組の中でも話したけれど、シリア・ポールさんの番組でストーンズの「hot stuff」を聞かなかったら、俺は今ここに居なかったかもしれない。若い頃はレコードを買う金がなかった。だから、FMの番組表を穴が空くほど眺めて、乏しい金でカセットを買って、それを録音した。おそらく月に一枚買うのがやっとだったアルバムは、そうやって厳選に厳選を重ねたものだった。それらは俺の血や肉になった。あの頃聞いたアルバムはすべて細部に渡るまで、そのレコードに入っている傷の場所まで覚えてる。当時のラジオのDJは音楽にのっかって喋るなんて、失礼なことはしなかった。どうかすると、アルバム全曲がフルサイズで流れていた。そして、どうしようもなく好きになったアルバムは後に自分の金で買った。いわば、それはリスナーを信用する最大のプロモーションだったように思う。グレイトフル・デッドがファンにコンサートの録音を許したように。音楽への愛がそこにはあったと思う。
 手前味噌で恐縮だけれど、我々がいつも忘れずにいたことは、今や奇妙な縁で「送り手」となったからには、俺とシリア・ポールさんの出会いのように、我々がかけた音楽にガツンと来る若者が居るかもしれない。だから、誠実じゃなきゃ、いけない。でもそのような番組がこの時代で生き残るのは難しい。この番組はほぼボランティア状態で作られていた。ただ、やって来たことは無駄ではなかったと思う。膨大なアーカイブスもある。何処かで誰かが聞いていてくれたっつー実感もある。だから、一度撤退して、時代にすり合わせた上で、もう一度やり直せばいいだけだけの事なのだ。最後に、こんな面倒臭い俺のわがままに「誠実に」付き合ってくれたスタッフと、リスナーのみなさんに心から礼を云います。ありがとう。ラジオってメディアは大好きなんで、またいつの日か戻ってまいります。多謝&再見。

img05120013_1img05120013_2
by 山口 洋