生きるとか、死ぬとか

2006/06/28, 18:03 | 固定リンク

6月28日 水曜日 晴れ 

 ようやく暗くて長かったトンネルを抜けようとしている。表現しようとしていた世界がとんでもなくヘビーなものだったから。でも、向こうから確かに光が漏れてくる。そちらに向かって歩いていく。もうすぐだ。そんな予感がする。何かを創るってことは、時に決して入ってはいけない風穴の暗闇の中に、自らの意思で突入していくようなものだ。だから、猛烈な体力と忍耐を強いられる。強い気持ちを持っていなければ、その渦の中に巻き込まれて戻ってこれなくなることがある。自分にとってのコンパスとも云えるもの。それは「エスポアール」であり、「光」である。
  シンキ臭い話になるけど、この何年かと云うもの、好むと好まざるとに関わらず、否応なしに「死」を見つめなければならなかった。それが多分、人生と云うものなんだろう。だから、とことん見てやろうと思った。アホな歌を書こうとしたし、軽い歌も書こうとしたが、自分にはまったくリアリティーがなかった。あぁ、こりゃ、このトンネルを抜けなきゃ、明日はないんだと、本能的に理解した。ルー・リードの近年の曲に「俺を下取りしてくれ」っちゅー素晴らしい表現があるんだけど、そこに行くには、ここを抜けなきゃ、って事だと思った。入っていた風穴は我ながら深くて複雑なものだった。「俺、毎日何やってんだろ?」と思ったけど、この曲は多分、新しいアルバムの核となるものだ。だから、逃げる訳にはいかなかった。あぁ、下取りして欲しい、本当に。でも、もうすぐだ。海が見えそうだ。潮騒と、磯の香りがここまで漂ってくる。

by 山口 洋