撃沈と砂塵

2007/03/15, 17:11 | 固定リンク

3月15日 木曜日 曇り 

 依頼されていた曲をようやく書き上げて、依頼主である巨石(キングコングって云った人も居るけど、云い得てると思う。確かに)に聞いてもらった。一言、「甘いなぁ」。否定はされなかったが、優しさを含んだ一種の完全なるダメ出し。俺とて、手を抜いていた訳じゃない。雑巾の最後の一滴を絞るようにして書いたのだが、過程なんてどうでもいい。結果がすべてだ。巨石から観れば、おいどんの人生なんて甘っちょろいものであることは間違いない訳であって、そのあたりを完全に見透かされてる。背伸びは良くない。俺は石であって、巨石でもキングコングでもないのだから。ただ、小石には想像力がある。かつて祖父も、親父も、時代をそれぞれの形で生き抜いた背中を観て育ってきた。ならば、俺にも書けるはずなのである。
 巨石が年下である団塊の世代に向けて放った言葉は痛快極まりなかった。現役バリバリのオールドパンク。彼がこのような発想をする人だとは、出会うまでつゆ知らず。パブリック・イメージとは恐ろしいものだ。苦言と優しさとヴィジョンとパンクな精神が岩から放たれつつ、それらが同居する時。あるいは巨石がパブリック・イメージから発掘される時。この国や時代を少しだけ愉快にする方法論がそこには見え隠れする。とりあえず、俺は「撃沈」と云う気分であるが、決して悪い感情でもない。何故なら「叱咤」されることに飢えているから。そこに込められたメッセージを拾い上げて、咀嚼して、歌にして、誰かが聞いてくれるのなら、俺の職業も悪いもんじゃない、と思うのだった。さ、浮上するぞ。

 時を同じくして、心の「兄貴」と録音させてもらった音源が届いた。そこに同封されていた文章には違う言葉で、巨石が語ったこととほぼ同じ内容が記されていた。「united=連帯」とは「独立」の礎の上にある。巨石、兄貴、俺を繋ぐ道には確かに「血の轍」が刻まれていて、そこには「お前はお前の道を往け」と書いてある。ならば、行くだけなのだ。砂煙を上げて。砂塵と共に。

by 山口 洋