その街

2008/08/17, 22:38 | 固定リンク

8月17日 日曜日 曇り 

 旅から帰ってきて、音楽を担当させてもらったそのドラマの完成品を観た。僕自身、福岡を離れて、随分たつのです。えっと、かれこれもう18年か。いろいろ変わってしまったなぁ、とか、祝いめでた、おっさん達が歌ってるの「生」で聞きたいなぁ、とか、中尾ミエさんみたいなおばちゃん、近所に居たなぁ、とか。きっと全国に散らばるあの街出身の輩が、ぐっときながら見るんだろうなぁ、とか。ぐっさん(親しみを込めて愛称で失敬)の演じる博多人気質が全国の人に伝わるといいなぁ、とか。

 音楽に関して云えば、予算とか、納期とか、そんな事じゃなくて、もっと「がっつり」と全面的にやらせて欲しかったと云うのが本音。プロットを読んだ段階で、実は10曲くらい作っていたのだが、諸々の事情で、レコーディングできたのは3曲だけだった。それゆえ、僕らが作ったものではない音源がたくさん使われていた。もちろん重要なシーンでは、心をこめて使われていたのだが、この状態で、名前がクレジットされることには少し抵抗がある。まぁ、長年のファンにはどれが僕らが作ったものかってことは聞いてもらえば分かると思うのだが。生き馬の目を抜くような視聴率競争の中で、こんな事を書くのはクリエイターのわがままだと知っていながらも、そのこだわりを失くしたら、自分じゃない、とも思うのです。

 とは云え、あの街には、もらってばかりで、何も返さないまま、流れ者になって、今は海辺の街にたどり着いているような、居心地の悪さがずっとあったのです。ほんの少しだけれど、恩返しをさせてもらったような気持ちです。

by 山口 洋