cleaning windows

2009/10/30, 16:07 | 固定リンク

10月30日 金曜日 晴れ 

 レースに向けての最後の調整。ゆっくりと10キロ走る。クールダウン、クールダウン。すべての事に愛と感謝を込めて。明日は走らず、蓄積した疲労を取る。ひと月かけて、自分にできることは全てやった。正しかったかどうかは不明だけれど。練習も学習もストレッチもメインテナンスを施すことも。そして人生をやり直すことも。今月の総走行距離274キロ。やり残したことは何ひとつない。

 最初は「無」になるために走っていた。何もかもゼロにしてしまいたかった。「世界に変化を求めるのなら、まず自分が変わらなければならない」と云ったのはガンジー。オレは過去にいろんな事を引き起こしてきた。あるいは引き寄せていた。顕在の世界では到底太刀打ちできない、あまりに膨大でどうにもならない潜在意識によって、それらは引き起こされていた。ある学問では、その事をインナーチャイルドを云うのかもしれないし、業と云うのかもしれない。走りながら、それらの事に気づき始めた。もともと「起きた」すべてのことを他人や社会や環境のせいにするタイプではなかったと思う。それでも100%、それらが自分の潜在意識によって引き起こされていた、とは考えていなかった。オレの家族や先祖から受け継ぐしかなかった業のせいにしていた部分があった。何故、オレの家族はひとり消え、ふたり消え、最後には犬までも居なくなり、オレは一人になったのか。その理由を知るには、満州国建設にまで遡らなければならなかった。けれど、人は追いつめられて、本当に生き始める。走りながら、居なくなったひとりひとりと会話してみる。彼らが抱えていたやるせなさや痛みが少しづつ理解できるようになった。それらをひとつひとつ受け入れる。「ありがとう」とか「ごめんなさい」とか「愛してる」と云う言葉を心でつぶやくことによって。ひとつひとつ、負の記憶を丹念に消していく。窓を磨くように。光が差し込むように。274キロの間に、それらの言葉をどれだけつぶやいたんだろう。「誰をも、何をも、操作したり、画策したりすることなく、ひたすらおわらない愛を目指していけば、必ず道は拓ける」。オレは誰かの未来になる。そう思うようになった。言葉なんか覚えるんじゃなかった。今までに何度もそう思った。けれど、「ありがとう」、「ごめんなさい」、「愛してる」。この3つの言葉ほど、オレに何かを教えてくれた言葉はない。今までに、オレに注がれた愛は無限だった。気づかなかったのは自分だ。そして、それは永遠に失われることはない。

 「cleaning windows」と云う大好きな歌がある。窓を磨き、そして光が差し込んでくる。面倒な人生だったと思う。しなくてもいい苦労をしたのかもしれない。けれど、これらの経験によって、オレの人生のチャプター2は始まったのだ。だから、今はすべての事に対して感謝の気持ちしかない。もう、あの「怒り」はなくなった。神が居るとするなら、それは宇宙と音楽の中に。生きている間に何処まで行けるのか分からないけれど、その道を往こうと思う。そこには光が差している。本当にありがとう。

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by 山口 洋