wild

2010/04/13, 18:39 | 固定リンク

4月13日 火曜日 晴れ 

 フルマラソンを走って、魚さんとツアーを終えたら、次の目標が漠然と見えてくるだろうと思っていた。それを手にしないまま、日々をやり過ごすほど、残された時間は長くないと思っていたし。ところが、ポテンシャルを全部出し切った後のダメージはかなりのもので、階段落ちの影響もあるのだが、筋肉を落とさないために、3日走らない日を作るだけで精一杯。2週間経過しても、ゆっくり15キロJOGすることしかできない。
 
 身体がこのような状態だからして、見えてくるはずのものも、まだ漠然としたまま。人からよく、「マラソンで自分の目標を掲げて、達成したときの気持ちってどんなものですか?」と聞かれる。確かに、全力は尽くした。カンドーもした。想いも込めた。けれど、人生観が変わるほど何かがあったかと聞かれるなら、応えは否。考えるまでもなく、諦めなければいつかゴールにたどり着くことは経験上知っていたし、達成するための努力は充分にやっていたし、それが自分との闘いであったとしても、安全なコースで、完璧に運営され、金を払って参加し、頂きがあるとするなら、自分で設定したタイムだっただけの話。僕は多分、残りの人生すべてを費やして、頂きが何処にあるのか不明な山に登りたいんだと思う。何処が最高到達点なのか不明な場所に挑み続けたいんだと思う。願わくば、死んだときが頂き。それだけははっきりと分かった。

 旅に出ようと思う。あてもなく彷徨ってみようと思う。かつて持っていたはずの、分かれ道での嗅覚。それを取り戻さなければ。僕は随分スポイルされてしまったようだ。野生に生きよう。そして帰ってきたら、身の廻りを限りなくシンプルにして、身軽になって、見えた頭蓋の中の風景を作品にすることに没入しよう。それを持って、もう一度世界に出てみよう。したたかに、インテリジェンスを持って、野に生きよう。肉を食らうのなら、その生き物を殺せる自分で居よう。僕が怖いものは人間だけだ。何もかもあるところには何もない。何もないところには何もかもがある。それだけははっきりと分かった。

by 山口 洋