梅雨とともに、広島県福山市にて 

2010/06/13, 23:49 | 固定リンク

6月13日 日曜日 雨 

 例えば、だけれど。僕らを支え続けてくれたファンが40台も半ばにさしかかる。子供は大学生と高校生。そんな話は良く聞く。昨年、ようやくマイホームを手に入れて、その支払いは定年後の70歳まで続く。給料はどんなに頑張っても思うようには増えず、細君も一日に4時間のパートに出る。家のローン、子供への仕送り、生活費、エトセトラ。それらを差し引いたなら、僕らのソニー時代のボックスセットを家長が手に入れたいと望むことは「家族会議」にかけられる。そうか、そうだよな、と初めて僕は気づく。そんな事をソロのツアーで学ぶ。

 四国、中国地方が梅雨入りしたと、ラジオで聞いた。高知を出て、瀬戸大橋を通って、広島県福山市にたどり着いた。ポレポレのオーナー、ユウさんはいつものようにハイチのコーヒーをいれてくれた。実のところ、ポレポレのライヴはどんなにでっかいコンサートよりもハードルが高い。ユウさんの前では、取り繕っても意味がないからだ。何を思ったか、ユウさんは僕のライヴの幕間に歌ってくれると云う。その時の彼のMCを採録。「ヒロシがここで初めて歌ったときのこと。彼は僕と同じものを見てるけれど、ヒロシはそれを反対側から見てるなぁ」と。あはは、云い得て妙。そして、ユウさんは「超」脱力したまま、彼の人生哲学「棚からボタ餅」を歌ってくれた。何だかなぁ、もう、かないません。一生かけても、あの歌詞は僕には書けません。でも、僕は彼の歌を聞いて、無駄な力が完全に抜けてしまった。今まで何処でもやったことのないような感覚をライヴ中に味わった。作為がなく、そのままで、自由で居ることほど難しいことはないし、それが永遠の憧れなのだけれど、そのヒントを教えてもらった気がする。だから、ツアーは止められないし、ニンゲンは面倒くさいけど、面白い。ユウさん、足を運んでくれた皆さん。本当にありがと。自由に空をはばたいて、また戻ってきます。ワン。

img10060013_1img10060013_2img10060013_3
by 山口 洋