奥義

2010/09/02, 10:52 | 固定リンク

9月2日 木曜日 晴れ 

 丹田に重心を置き、肩甲骨を引く、すると骨盤が回転して、足が前に出る。書けばこれだけ。でも、ようやくそれが身体で分かりかけてきた。一年かかった。一歩に換算すれば、伸びたストライドはわずか数センチにすぎない。でも、今までと同じ労力で、キロあたりのラップタイムは20秒以上速い。こりゃ、凄い。で、着地は必然的に踵からになる。すると、宙に浮いた状態から着地した反発力を、次の運動に利用しているのが分かる。今まではその力を靴が吸収していたのだ。だから、必然的にレース用の底が薄いシューズになる。こいつは薄い代わりに底が固い。おそらくこれでスピードを更に上げていくと、踵からの着地が不可能になる。イメージとしては「跳んでいる時間」の方が長い。その状態が有酸素運動と無酸素運動のギリギリのところに位置していて、そのラップがキロあたり4分15秒であれば、僕のもくろみは完璧になるはずだ。
 ようやく奥義に達したところはいいのだが。いや、まずは諦めなかった自分を褒めてやろう。お前は本当にしつこい。ただし今の問題は「ゆっくり走れない」ことにある。このフォームだとゆっくり走るのが限りなく難しい。肩甲骨を引くと、足が出て、ストライドが伸びてしまい、ゆっくり走れないのだ。下りだと4分を切りそうになる。誰かオレを止めてくれ。僕の心肺はそこまで鍛えられていない。10キロ走っただけで、心臓が口から出そうになる。つーか、死ぬ。おまけに、今までとはかなり違う部分の筋肉を使っていて、筋肉痛もヒドい。毎日、筋繊維が切れてる感じがする。体幹が出来上がっていないので、一歩間違えたら、身体がバラバラに分解しそうだ。思いあまって、師匠に電話した。「俺が見つけたこと間違ってないよね?」。「間違ってないです」。「でもさ、速くて死にそうなんだけど」。「うーん、そうなんですよ、ゆっくり走るのは難しいんですよ。僕も一年前からそれに取り組んでます」。し、師匠。もう少し、タメになるアドヴァイスをください。

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by 山口 洋