ヤスと云う生き方

2010/10/15, 14:23 | 固定リンク

10月15日 金曜日 晴れ 

 ヤス(大島保克)と僕は昼下がりの代官山にある瀟酒なカフェでランチをしていた。多分、モーレツに似合っていなくて、そして浮いていた。これから丸一日に渡って、行動を共にするとは、お互い思っていなかったけれど。
 ヤスに初めて会ったのは、多分90年代の初頭。お互いデビューしたばかりで尖っていた。ピーター・ガブリエルが主宰する「womad」と云うワールドミュージックの祭典で、大げさに云えば、日本代表に選ばれたのが都はるみさんと僕とヤスだった。以来、僕らが顔を合わせたのは「たった3回」。僕はロック界(そんなものあるのか?)で「一番面倒くさい男」と呼ばれ、ヤスはヤスで民謡界において同じように云われていた。僕らに云わせれば、それは違う。嫌なことを嫌だと云い続けてきただけで、「ちゃっかり」生きることを好まなかっただけのことなんだけれど。
 近年、彼がステージで音を出すのを聞いたとき、「こりゃ本物だ」と思った。理由はない。本物は音が出た瞬間に既にそうなのだから。昔だったら、多少のジェラシーを感じたと思う。けれど、僕はもうガキではない。新良幸人とヤスが奏でる世界はそれはそれは素晴らしいものだった。この二人、破格の才人かつキチガイ(褒めてますから)を輩出した石垣島の白保と云う場所に俄然興味が湧いた。聞けば聞くほど、知れば知るほど、そこはとんでもない場所だった。そして、まだ僕には語るべき言葉がない。彼と出会ってからの16年の月日はそれぞれにさまざまな変化をもたらした。そして、今日「何がしか」の必然をもって、僕らはここで飯を喰ってるんだろう。
 代官山から海を見渡すことができるお茶屋、それから僕の仕事場、いくつかのバーを点々と移動して、僕らは積もる話をした。半分以上はバカ話だったけれど、大切なことも話した。そして、多くの言葉を費やさなくて、互いに人生のチャプター2に入ったことを理解した。いい時間だったな。

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by 山口 洋