この世界

2010/11/08, 16:51 | 固定リンク

11月8日 月曜日 晴れ 

 師匠のゲンは足を故障中。そして弟子の僕も。でも、リディアード直伝の「リラックス・ストライディング」を伝授される。「ヒロシさん、これは二分台で走ってください。出来ますから」。「出来ないっつーの」。でも、君がそう云うならやってみるよ。何だか、身体の変化はチャプター3に入ってきた感じがする。気に入った洋服はまだ買えない。体形が変わるからだ。まずは激ヤセに始まり、骨と皮だけになってそこに筋肉がつき始め、チャプター3に入ると、その筋肉の質が変わって、上へ上へとつり上がってきたと云うか。確かに走ると気持ちが澄んでくる。でも、本当に芯から澄んだのかと問われるなら、そんなことはない。闇はそんなに簡単なものじゃない。ただし、その闇を見つめるために一番必要な体力だけは身についてくる。走っているとき、ときどき自分がマシンのように感じることがある。それとは違う意味で、ひかりも闇も超えて、自分の存在を忘れてしまう瞬間もある。僕は動物で居たい。従順にはなりたくない。走ることだって、スポイルされる危険性は山ほどある。

 宅急便のお兄さんが巨大な段ボールを運んできた。ニンゲンが3人は入りそうなデカさだった。「そ、それは何ですか?」。自転車だった。忘れてた。届いたのは嬉しかったけれど、ここまで梱包しなくても、と思う。何にも流用できそうにないので、カッターでバラバラに分解して、リサイクルに出した。頭の中にでっかい「?」が浮かんだ。

 とある業務が自分の手に負えないので、「見積もり」のサイトにアクセスした。電話番号を書くことをためらったけれど、書かなければ「見積もり」してくれないので、仕方なしに書いた。驚くなかれ、一分後から電話が鳴り止まない。恐ろしかった。

 先日訪れた高知の古い港町とは、あまりに対照的な世界に僕は住んでいる。それがいいことなのか、どうなのか僕には分からない。ただし、自分の生活に確信だけは持っていたい。で、なければ簡単にこの世界に振り回される。

by 山口 洋