親子で山に還る

2010/11/24, 19:18 | 固定リンク

11月24日 水曜日 晴れ 

 寺に行って、納骨堂に親父を還して、僕なりの儀式は終わりのはずだった。でも待てよ。親父は山の家に行ったことがないはずだ。じゃ、一緒に行くか。ここの裏庭にはともだちが作ってくれた「勝手なgraveyard」がある。冷たい納骨堂より、こっちの方が開放的で好きだから、母親も犬もここに眠ってることになってる。あくまでも僕の中では。
 本当に一人きりになって、僕は寂しさを感じないようになった。鈍感になったのではない。僕の寂しがりやはかつて尋常ではなかった。それは自分の最大の弱点でもあった。でも、何もかも失ったら、何もかもがある気がするのだ。大切なものは何も失われない。親父をgraveyardに還して、おかんと一緒に天に昇るように祈った。薪ストーブの煙が空に昇っていく。多分、あの中に彼らは居るだろう。
 さて、ガシガシ走るか。峰までの標高差300メートル、往復10キロの道のりをぶっ飛ばした。登りを5分で、下りを3分台で駆け抜ける。古い筋繊維が切れていくのが分かる。オレも随分速くなったもんだ。筋肉はこのトシになってもまだ成長する。願わくば、心のそれもね。
 帰ってきたら、気温は0度になっていた。多分、都会から逃げているだけだろう。あの段ボールとハウスダストから。一日だけ滞在して、この家の冬支度を終らせたら、1200キロの道のりを超えて、都会に戻ろう。

by 山口 洋