stories#2

2005/10/20, 23:44 | 固定リンク

10月20日 木曜日 晴れ

 引き続き、沢山の物語を送ってくれて、ありがとう。そのひとつひとつに、それぞれの響きと風景と想いがあり、まるで短編集を読んでいるかのようでした。殆どが個人的な事情を綴ったものなのですが、すべてをあらためて読み返してみると、背後で「時代」と云う手に負えない「怪物」のようなものが糸を引いている姿が浮かび上がってきます。僕も含め、今を生きる人々がその怪物に翻弄され、日々フントーしています。「時代」を語るには、あまりに沢山の要素があります。でもそれを「時代のムード」と云う言葉に置き換えるなら、この国には「何もかもがあるけれど、何かが決定的にない」(村上龍さんは作品の中でそれを「希望」と書いてたけど)と云うムードが蔓延しているように感じています。池畑兄の至言。「一番怖れているもの」と云う問いに、「無知」と応えていました。この「無知」が意味しているものは、「知らないこと」ではなく「知ろうとしないこと」なんだと目から鱗の思いがしました。
 同時に「頑張りすぎてパンクする」ことが多い気もするのです。「弱さ」もたまに美しさだったりするのです。何せ、抗っている相手は「時代」っちゅー怪物だったりする訳だから。
 じゃ、どうしたらいいんだ?って。17,8年程前、僕のヒーローの一人であるケヴィン・エアーズに会ったことがあります。彼は簡単に記すと僕の中では「頑張らない人」の代表です。音楽業界に嫌気がさすと、遠い島にエスケイプしたりします。彼は澄んだ瞳でこんな歌を紹介してくれました。英語があまり得意ではない僕の意訳なんで、正確かどうかは?ですが。

「僕は本当に僕なんだろうか?」

野望なんてあるわけがなく
競争の日々より釣りの方が好きだった
生まれつきの怠け者だったけど
自分に何が出来るかってことぐらい知っていた
間違った時代に間違った場所で生まれたのさ

金や支払いのために働く
それは明後日には意味のないことになる

健康のためなのさ
僕は本当に僕なのだろうかと夢を見るとき

誰かは逃げてるだけだと云う
でも気づいた時にはみんな逃げた後だった
でも私たちができる一番の事は
私たちが何処に居るのか知ることだと信じてる

「進歩」と呼ばれている間に
私たちは魂を売り続けてる

僕は本当に僕なのだろうかと夢を見るとき

by 山口 洋