only one

2005/10/24, 22:14 | 固定リンク

10月24日 月曜日 晴れ 

 月曜日。歌を書いている。例によって、グルングルンに廻るだけで何処にも辿りつきやしない。アルバムを創る上での最終行程にマスタリングってものがあって、そのスタジオで初めて完成したものを通して聴くのだけれど、「おまえ、云ってることが20年前と何ひとつ変わってねぇ」と毎度ながら己に愕然とするのだった。伝えたいことはたったひとつしかないらしい。でも、そうなんだからしゃーない。あまりにも近く、あまりにも遠い。
 虫にたとえてみた。
 街灯に集まる虫のように、彼はやってきた。ぐるぐる廻りながら、光を求めて。平凡につまづいて、ややこしさを抜けて、歪んだ夢も見て、まだぐるぐる廻ってる。終わるのは嫌だけど、続けるのも怖かった。続けるのは嫌だけど、終わるのも怖かった。手のひらから砂がこぼれ落ちてゆく。どこまで行けば見えるんだろう。いつまで待てば終わるんだろう。食べ物だけが腐るんじゃない、と誰かの声が聞こえてくる。しょーもないサービス精神、意味のない正義感。きっと手放せばいいのさ。過去は既に終わってる。病も憎しみも別れもない。欲も競争も苦しみもない。恐怖や敵もない。きっと、手放せばいいのさ。モンゴルの草原で、エジプトの砂漠で、あんたはまた生まれてくるだろう。心配するなよ。

by 山口 洋