みちのくを行く

2006/04/30, 16:11 | 固定リンク

4月30日 日曜日 晴れ 

 俺は東北の人が総じて好きである。せっかくだからと男3匹でとある場所を訪ねた。そこで触れたいくつかのあたたかい心に関しては、そっと自分の胸の中にしまっておきたい。訳もなく、それが彼等のもてなしに対する礼儀のような気がするから。

by 山口 洋  

ARABAKI ROCK FES

2006/04/30, 16:09 | 固定リンク

4月29日 土曜日 曇り 

 宮城県、ARABAKI ROCK FESにて明星、古明地洋哉と演奏。深夜、森の中のステージに一人で立つ。ちょっとだけ宇宙と交信してるような不思議な気分になる。ギターって楽器は森に帰るといい音で鳴る。おかえり。ただいま。俺たちはいつも、用意されたステージで歌ってるだけ。fesってもんを運営してる連中の尽力を想うと、いつも頭が下がる。だから、自分に出来ることをやる。音楽の持つ力を、森にオーディエンスに伝えようと思う。たとえどこかのバカチンが「華がない」とのたもうともな。
 関わってくれたすべての人に、特に菅君、あんただよ。ありがとう。

by 山口 洋  

忍耐とハグ

2006/04/28, 15:56 | 固定リンク

4月28日 金曜日 曇り 

 朝。ハシケン君の曲を覚えていた。変拍子の曲で、なかなか身体に入らなかった。突然、玄関のチャイムが鳴った。「読売新聞」の勧誘だった。しつこかった。俺は今、音楽で頭が一杯なのだ。奴は強引に商品券を俺に掴ませようとした。っつーか、俺の懐にねじ込んだ。野卑、極まりなし。久しぶりに頭の中に「white riot」が流れたが、いつも冷静な王監督を思い出して、こらえた。でも、奴はしつこい。「三ヶ月でいいからさぁ。俺も大変なんだよね」。知るか、そんな事。「悪いけど俺、巨人が嫌いなんだわ。だから、とっとと帰ってくれ」。脈がないとみた奴は俺の懐から商品券を抜き取って、捨て台詞を残して去った。あぁ、気分悪い。そして、頭から例の変拍子の曲は完全に抜け落ちていた。

 下北沢でハシケン君と演奏した。一人でこの世知辛い音楽業界を渡ってきた男っつーもんは、どうにでもフレキシブルに対応してくれる。そういう強さがある。そして、例の変拍子の曲は見事にずっこけた。すまん。また、何処かの空の下でね。ありがとう。

 帰りしな。タクシーを待つ。今日のタクシーのテンションは尋常じゃなかった。はたと気付いた。そうか、明日から連休なんだ。稼ぎ時なんだ。全てのタクシー運転手がそうでないことは分かっている。だが、俺は続けざまに乗車拒否の憂き目に遭った。遠くまで乗りそうになかったからか、はたまた態度が悪かったのか、見てくれが悪かったのか、それは分からん。ただ、気分は悪かった。とどめに。個人タクシーが来た。空車だった。俺が手を挙げたのを見るやいなや、奴は唐突に天井のぼんぼりを消した。個人タクシーっつーのは優良ドライバーでなければ、その資格を有することはできないのだ。真剣にムカついたので、信号待ちで停車してた奴に向かって、「あんたはプロとしてどうかと思う」と云ったら、罵声を発して、その場を去った。切なかった。

by 山口 洋  

それぞれのなまり

2006/04/27, 20:49 | 固定リンク

4月27日 木曜日 曇り 

 昼過ぎ。某コメと明星とで「ARABAKI ROCK FES」のリハーサル。マイクやアンプを通さない演奏ってのは、演奏者のダイナミクスが手に取るように分かる。
 家に帰り、明日のハシケン君とのライヴの曲を覚える。彼のリズムは絶妙になまってるから、難しい。なかなか身体に入らない。っていうか、一緒に演奏するまで、体得するのは無理だね。何にせよ、一日に3人の違うタイプの音楽を身体に入れるのは難しい。今頃、気付くな自分。

by 山口 洋  

人生と云うギャンブル

2006/04/26, 13:58 | 固定リンク

4月26日 水曜日 曇り 

 俺は競馬も競輪もパチンコも競艇も株も、いわゆるギャンブルに興味がない。どうしてかって、考えてみたことがあるんだけど、ミュージシャン-自由業の人間なんて人生そのものがギャンプルみたいで、日々乱高下を繰り返しているからして、今さらギャンブルする必要がないんだろうね。一度だけ、事務所の長に競馬に連れていってもらったんだけど、馬が走っている事よりも、日頃冷静沈着な彼が背後で「刺せーっ、刺せっー」って絶叫してるのを観察している方が面白かった。ちなみに、俺はその時、勝ったと思うけど、特別な感情は湧いてこなかった。
 用があって、金融機関に行った。待ち時間に、近頃はサラ金と銀行が提携してることを知ったりして、驚いた。すげぇ世の中だな、とか。俺はそんな用事で行ったんじゃないのに、窓口の人はしきりに俺に利殖を勧めるのだった。色とりどりのパンフレット、巧みな話術。でも、まるで気が進まない。「国債なんて、安全ですよ」。でもさ、それって国の借金だろ?結果的に、自分たちの首を真綿で締めてるようなもんじゃないの?「ひょっとして、俺はバカなのか」っちゅー考えが頭をかすめた(いや、巧みな話術に一時的に洗脳されたと書いておこう)ので、とある人物に電話して「俺ってバカなのかな?」と聞いてみた。すると、「いや、あんたはバカじゃないと思うけど、その場で話を聞いているあんたの姿を想像したらおかしい」と。結局、人生はギャンブルなんだよ。だから、老後の事なんて知らん。いや、既に老後は始まってるのかもしれん。「お客様は国民年金でいらっしゃいますよね?」。そうだよ。でも、そんなもんアテにしてたら、こんなやくざな稼業やってられんよ。今現在、いちおう社会人の端くれとして、上の世代を支える責任があると思うから払ってるだけの事で。
 ときどき、子供みたいな疑問が頭をよぎるんだ。そもそも、土地っていったい誰のものなんだ。始まりは誰のものでもないだろ?最初に誰かがそれを囲って「これは俺のものだ」と主張した。その権利に関して、争いが頻発。こんな事云ってたら、「おまえ、原始共産制にするしかねーだろ」って話になる。うー、頭痛い。
 俺が生まれたのは60年代。高度成長のまっただ中。ケネディーが暗殺され、オリンピックがあって、金利は上がり、水俣病があり、イタイイタイ病があり、安保があり、一億総中流意識ってのがあって、万博があって、(すごく中略)現在に至る。ここに至るまで、俺に影響を与えたスピリットについての歌を書いている。結局、人間は学ばないのか?そうかもしれんけど、そうじゃないと俺は思いたい。人生はギャンブル、そしていつも道を歩いていることでしかなくて、答は永遠に風に舞っている。渋谷の街を歩きながら、そうでしかないよな、と呟くしかなかった。

by 山口 洋  

山の生活

2006/04/25, 21:35 | 固定リンク

4月25日 火曜日 晴れ 

 東京に戻った。完全に「山の人」になっていたから、羽田に着いたときに、俺は浦島太郎みたいだった。何日か、ネットに繋ぐ気もしなかった。当たり前のようにやってくる朝に感謝して、太陽に感激して、夕暮れに心打たれて、夜は飽きずに星を見つめていた。そのような暮らしの中で書かれた曲がどうなのか、俺には分からない。でも、久しぶりに自分の中の宇宙をもたっぷりと見つめることができた。今はありがとう、と云う言葉しか思い浮かばない。ありがとう。さぁ、明日からがんばろう。

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by 山口 洋  

新しいルール

2006/04/21, 20:22 | 固定リンク

4月21日 木曜日 晴れ 

 いろんな人がこの山に来て、そして去っていく。たいていの場合、なごり惜しそうに去っていく。来る者は拒まず、去るものは追わない。人々は、いろんな想いや人間の残り香のようなものを残していく。それが嬉しい。大したものはないけど、出来るかぎりのもてなしをする。ま、かなりの放置プレイではあるけど。そこに会話が生まれる。まれに「仕事」に繋がることもある。けれど、それは「商売」以前に、「大切なもの」を見つめたものであることが多い。それがまた嬉しい。
 山に持ってきたのは、小さなマッキントッシュとギター、音を取り込むためのインターフェイス、それにマイク一本。この時代、これだけで、詩作から録音、そして都会とのやりとりまでをこなすことができる。素晴らしい。同時に、暖を取るために薪を割り、近隣の人々に家族のように接してもらい、美味なるものをたびたびごちそうになり、いつも自然に対する教えを授けられている。テクノロジーの恩恵と人々の想い。その中から「新しいルール」を学んでいるんだと思う。次のアルバムに収録するための曲の殆どは、この場所で書いている。だから性急なものには決してならないと思う。けれど、その中に、人として、当たり前の「祈り」を込めている。笑ってくれるな。特定の宗教のない俺だって、「祈り」たいことは山ほどあるんだ。そして、それらがこの時代を生き抜く多くの人たちに、「多少の毒と薬」として響かんことを願って。

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by 山口 洋  

yes

2006/04/19, 15:35 | 固定リンク

4月19日 水曜日 晴れ 

 「今、一番好きな言葉は?」と訊かれたなら、「yes」だと俺は応える。いろんな事を肯定して生きていくのは、難しい。でも、どんな状況であれ、「yes」と相手の目を見て、応えることができる人間でありたいと、強く思う。
 シンプルに生きていきたい。ここに居るとそう思うことが多い。ギターを握って、「yes」と云う言葉が繰り返されるだけの歌を書いた。悪くなかった。

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by 山口 洋  

太陽の恩恵

2006/04/18, 18:22 | 固定リンク

4月18日 火曜日 晴れ 

 ここの暮らしは甚だ天気に左右される。太陽が出てる日はその恩恵に預かってないと、後でヒドい目に遭う。洗濯をしよう、布団を干そう、薪を割ろう、草を刈ろう、壊れた家の補修をしよう、掃除をしよう、空気を入れ替えよう、エトセトラ。そして良く晴れた日の夜は寒い。未だにマイナスになることもある。でも星がきれいさ。
 露天風呂を池畑さんに掘ってもらう夢も、外でワイワイみんなで飯を喰うために、かまどを作る夢も、ボロボロの車をこつこつレストアする夢も、峠からグライダーに乗って飛ぶ夢も、なーんも実現しないまま、時間が過ぎていく。しゃーない。
 その合間をぬって、曲を書く。あるいはレコーディングをする。結構、いや、実際のところ、かなり忙しい。

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by 山口 洋  

カルマンギア

2006/04/17, 18:19 | 固定リンク

4月17日 月曜日 晴れ 

 FLAT4空冷エンジンの音を響かせて、友達が山にやってきた。惚れ惚れするくらいいい音だった。1964年製のカルマンギア。彼は休みのたびに、コツコツと自分でレストアして、この車を仕上げた。俺もね、昔ビートルに乗ってたんだ。100キロ出して、羽つけたら、飛びそうだったけど、「運転」ってこう云うことだろって、教えてくれた。乗ってて愉しかった。で、彼の車を拝借して、山道を走る。サイコーだねぇ、云うことないねぇ。ロックしないブレーキ、自分の居場所を教えてくれる機械、自動で開閉する窓、ハンドルを軽くしてくれる装置、シフトを換える必要のないギア、デフ、熱線、ギンギンに冷えるクーラー、エトセトラ。何ひとつ便利なものはついてないけど、訳もなく愉しかった。うん。愉しかった。

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by 山口 洋  

月と太陽と近藤智洋

2006/04/16, 17:06 | 固定リンク

4月16日 日曜日 晴れ 

 昨夜遅く、胸騒ぎがして外に出たら、待望の月。嬉しくて、三脚を抱えて写真を撮る。明日は晴れるよ。きっと。
 朝、昨日とはまるで違う世界が広がっていた。音のない青空。どこまでも空。霧の日があって、今日がある。嬉しい。
 近藤智洋の新しいアルバムが届いた。早速聴いたよ。奴の音楽は自然の中の晴れた日にも思い切り響きます。空に向かってぐんぐん伸びていきます。アルバムのタイトルは「近藤智洋」。想像だけど、ド真ん中に渾身のストレートを投げたんだろうね。ありがとう、受け取ったよ。今日、この家から見かけた、沢山の鳥たちと、イタチと野ウサギと共に。

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by 山口 洋  

沈黙の塔

2006/04/15, 19:18 | 固定リンク

4月15日 土曜日 驟雨 

 未だ太陽は微笑まない。ずっと、ずっと霧の中。洗濯しても乾かないから、もう着るものがなくなった。生乾きのパンツって、屈辱的に気持ち悪い。
 
 昨夜遅く、ようやくひとつの曲をモノにした(はず)。山から都会に戻る車の中で、急に湧いてきてから約半年。ずっと温めていたアイデアが実を結ぶと、やはり嬉しい。山よ、ありがとう。俺が極度に集中できるのは約1時間。それを「1ラウンド」と呼んでいる。都会では3ラウンドが限界だけど、昨日は8ラウンドくらい闘うことができた。

 新しい曲に取りかかった。主人公は深夜、自室のコンピュータに向かい、世界にアクセスする。自分にログインして、朝ログアウトする。彼の頭の中には「バベルの塔」に良く似た形の、巨大な「沈黙の塔」がそびえている。いつかてっぺんまで登って、そこから見える景色を感じてみたいが、入り口さえ分からない。なんて事をずっと考えていたら、自分がその世界に完全に没入していた。宅急便のおじさんが「こんちわー、宅急便です」と声を掛けてくれた時、何が起きたのか分からなかった。つまりは生乾きのパンツと沈黙の塔と霧の世界に生きています。にゃん。

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by 山口 洋  

煤だらけの列車

2006/04/14, 20:02 | 固定リンク

4月14日 金曜日 霧の中、アゲイン 

 朝7時に起きた。霧の中だった。幽玄な眺めだったけれど、たまには太陽が見たい。気分転換の野良仕事を除いて、ずっと曲を書いていた。ファインダーを覗いて、画架と構図を決め、フォーカスがロックした感じ。残念ながら、それにはほど遠い。まったくのフィクションではないけれど、空想と現実と幻想と現在と過去と未来がごちゃ混ぜになっているから、焦点が合わないのは仕方ない。昔はこの作業が苦痛だったけれど、今は愉しい。だってプチ映画監督兼、脚本家みたいな仕事だからね。熊手をふるって考え、草刈り機を振り回して考え、飯を作りながら考え、風呂に入って考えている。多分ちょっとだけ哀れな光景だとは思うけど。
 ところで、末恐ろしいくらいの数の「土筆」が顔を出している。奴らはちょっと遠出して、探しながら摘むから可愛いんであって、すすき野よろしく、にょきにょきあちこちから生えていると、かなり不気味な光景である。で、「土筆」って枯れたら、ナズナ(だったっけ?ハコベだったかもしれん。昨日近所の兄貴に教えてもらったんだ)になるって知ってた?おまえは変態植物か、それともカフカの読みすぎなのか?どーりでヘンな形をしてると思ってはいたけど。
 夜、煤だらけの列車が夜空に向けて走っていた。そのような光景を見たり、感じたりする俺はキチガイかもしれん、と思いながら、否。ソングライターはただのイタコに過ぎなくて、意味不明の信号をアンテナ伸ばしてキャッチしてるだけかもしれん、とも思う。でもそのアンテナが「土筆」の格好をしてたら、俺は嫌だけどね。この前、東急ハンズで「廻るタイフーン、仮面ライダー変身ベルト」が売ってたんだ。ガキの頃、金持ちのドラ息子が持ってたのより、もっと精巧なやつさ。俺はあれを装着して、煤だらけの列車を追いかけたい。

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by 山口 洋  

フォギー・デュー

2006/04/13, 16:16 | 固定リンク

4月13日 木曜日 霧の中 

 一日中、霧の中。標高が1000メートル近いってことは、ずっと雲の中に居たってことです。甚だ自然に引っ張られる俺としては、思考もそのような状態の中に居ます。がんばったって仕方ない。でも、今しか考えられない思考、フォギーでも滴のような思考、そこに居られるように、静かに時間を過ごしています。

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by 山口 洋  

prayer on the hill

2006/04/12, 18:08 | 固定リンク

4月12日 水曜日 曇り 

 いつもお世話になっている近所のKさんー生粋の九州人ーのところに「しーちゃん」っつー犬が居る。大人しくて、人なつっこくて、とっても可愛い奴。でも、末期の癌に冒されていて、もう会えないかも、と云われていた。でも生きていてくれた。小さな身体を覆うように、腫瘍は大きくなっていて、もう歩けないけど、でも生きていてくれた。彼女の瞳は澄んでいた。まるで俺の心の奥を見通しているみたいだった。
 家に戻って、歌を書き始めた。それでも、「人生にはイエスと云うためのエネルギー」が必要なんだ。それさえあれば、何とかなる。丘の上の小さな標に、いろんな事を祈った。もちろんしーちゃんの事も。愛しいたましいたちよ、もうがんばらなくていい。

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by 山口 洋  

fields of gray

2006/04/11, 22:06 | 固定リンク

4月11日 火曜日 曇り 

 半年振りに山にやってきた。家中にクモの巣が張っていたけれど、鳥のさえずりと、風の歌、雨がテラスを叩く声、河のせせらぎ。それ以外、何も聞こえない。携帯はほぼ通じない。やったぜ。もうすぐ自分の心の声が聞こえてくるだろう。ひとりきりだけれど、本当に嬉しい。まだここはストーブが必要で、新緑と云うより「fields of gray」。でも灰色の地面から、いくつかの緑が顔をのぞかせている。まるで今の自分の心象そのものだった。
 薪ストーブの上にシチューがのっている。野菜を丸まま放り込んでおけば、忘れた頃に出来上がる。流れていく雲を見ながら、風呂に入って「ぷはぁ」とひとりごちた。至福。さぁ、静かに音楽に向かおう。

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by 山口 洋  

エスケイプ from

2006/04/10, 23:52 | 固定リンク

4月10日 月曜日 雨 

 夕刻。飛行機に乗って、某所にエスケイプ。今日は仕事はしない。美味いものをたらふく喰って、飲み屋をはしごした。その居心地の良い飲み屋には、何故か前川清が流れていた。彼の歌は凄かった。特にクール・ファイヴ時代の彼の歌は神がかってた。こぶし、スピリット、歌を伝える力。何が凄いって、彼が一言発するだけで、情景が目の前に広がってくるのだ。昔の歌謡曲ってこうやって聞いてみると、オケも素晴らしい。歌を真ん中にすえて、決してでしゃばらずにダイナミクスをつける。おそらく、オケも歌もほぼ一発で録音されてたんだと思う。何と云うか、人間にしかできないぬくもりのある音楽だ。キヨシに心を鷲づかみにされて、酒が進んで千鳥足になったけど、大切な事を教えてもらった。

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by 山口 洋  

目を閉じて

2006/04/09, 22:54 | 固定リンク

4月9日 日曜日 晴れ 

 目を閉じてる君の方が
 僕より遠くを見つめているのは
 どうしてなんだろう?

by 山口 洋  

出発

2006/04/08, 23:59 | 固定リンク

4月8日 土曜日 天候不明 

 遠い空に 海鳴りを聞いている
 この空から 耳鳴りが聴こえてくる

 どれだけ遠く 離れてみても
 追いかけてくるものがある
 きっといつまでも 誰かを想い
 きっといつまでも 空しさを感じているだろう

 話せるのは
 自分が知っていることだけさ

 私にはまだ
 太陽が黄色く見えることがある

 いつか静かに 裂けていくだろう
 いつか静かに 裂けていくだろう

 記しておこう 私はひどく忘れっぽいから
 奇妙な声が聴こえたから

 妄想にだって きっと意味はある
 幻想としての真実
 その言葉を探しに
 ただひとつ 憎しみはのぞいて

 道は凍っていて 空には無数の星
 確かに
 食べ物だけが腐っていくんじゃない

 短い沈黙
 
 人生にイエスと云うためのエネルギー
 大事なのは何にせよ 出発することだ
 何にせよ 出発することだ

 

 

 

by 山口 洋  

郷土の味と、岩のような精神、そして友からの手紙。

2006/04/07, 19:53 | 固定リンク

4月7日 金曜日 曇り 

 何日か前、新聞の折り込み広告に「福岡物産展」っちゅーのが入っていた。そりゃ、気になるわな。俺はムシャクシャしてた。吸い寄せられるように、百貨店の催事場に足を運んで、目玉商品のラーメンを喰って、そして哀しくなった。お前は何度、同じ過ちを繰り返すのか。
 スコットランドのスモークサーモン、沖縄の泡盛、エトセトラ。その土地で喰らうからこその味っつーもんがあるのだ。「ラーメン喰うには空が狭い」。ラーメン喰うには空が狭いんだよ。
 辺見庸さんの新作を読んでいる。重い病床に於いてなお、彼の精神は岩の如し。言葉に平手打ちを喰らったり、ずいずいと脳髄に(辛いものを喰った時みたいに)染みてくるものもある。頭がカーっと熱くなる。「不屈」と云う言葉はもはや当てはまらず。愉しいなんて事からもほど遠い。決して軽くはないが、必要以上に重くもない。この面倒くさい世の中に生を授かったのは、俺の所作じゃない。かと云って、明日東京湾に浮かぶ訳にもいかん。だとするなら、せめて俺が愛の産物であった事を確認したら、やるべき事をやることでしかないっちゅー、いつものところに着地するのだった。

 イタリアに滞在中の親友から葉書が届いた。奴は日常の中の深遠さをいつも見つめている男で、画家だ。文章がいつものように風のようだった。本当に心に風が吹いていった。なぁ、友よ。お前に会ってから、随分長い時が流れた。何もかも変わってしまったような、何ひとつ変わってないような、そんな気分だよ。気をつけてな。帰ってきたら、一杯やろうぜ。

by 山口 洋  

born to

2006/04/06, 23:52 | 固定リンク

4月6日 木曜日 曇り 

 友人がくれたビデオの中にブルース・スプリングスティーンがどうやって「born to run」を創ったかっっちゅーのがあった。彼とバンドはかの曲に半年(絶句!)かかりきりになっていたと。彼とて、シンプルなものを愛してるのだが、そのマルチテープには思考の過程で試された数々のボツトラックが残されていて、無数のアイデアを全て試し、 イケてるアイデアが練り込まれ、最終的にあのドライヴ感が生まれているってところが、興味深かった。
 俺とて「鉄は熱いうちに打て」ちゅーのがモットーである。けれど、素晴らしいものを創るには時間がかかる。主観と客観を繰り返すうち、まるで分からなくなることもしばしばある。スタジオにて、まるで、「この世の終わり」みたいな表情を浮かべている彼を観て、それでもメゲない創作者としての執念に、表現者の性を感じる。自分との決定的な違いがあるとするなら、試行錯誤の先に「成功」への欲があるかどうかだと思う。彼はその欲を、音楽の質を高めるためのモチベーションに見事に転化させていた。弱冠24歳。天晴としか云いようがなかった。

by 山口 洋  

ビジネス

2006/04/05, 23:59 | 固定リンク

4月5日 水曜日 晴れ 

 連日、にわかビジネスマンの様相を呈している。煩雑、面倒極まりないけど、それをやらねば音楽に集中できないのなら、何てことはない。俺は来週エスケイプして、音楽に集中することに決めた。だから、最初は嫌々やってたんだけど、おそらくこの作業の中から音楽にフィードバックされるものも多々あることに気づいた。真の「独立」って言葉の意味は精神的、金銭的っちゅー2つの側面がある訳で、それをクリアしないことには「独立」したバンドとは云えないのだった。「何でもソツなくこなす、けれど決定的に何かが足りない」と何年か前に書いたけど、今の時代は「何でもソツなくこなす、けれど、決定的に音楽がイケてる」っちゅータフネスが必要とされる。ならば、やってやろうじゃないの。多分それは実現するし、出来なければ明日はない。今まで散々タイトロープの上を渡ってきたことを、今頃になって感謝してる。俺は「日々を生き抜くためのリポビタンD」みたいな音楽を作りたいと思ってる。「傷口に塩を塗り込む」みたいな音楽はもういい。安易な「希望」ではなく、本物の「エスポアール」を音楽にするには、これらの作業がマイナスになることはないはずなのだ。にゃん。

by 山口 洋  

新しい価値

2006/04/04, 23:56 | 固定リンク

4月4日 火曜日 晴れ 

 都会からエスケイプしたい。でも、ライヴがあるから出来ない。たまには俺にも無気力の嵐が襲ってくる。静かに自分に向き合いたい。だから、山積してることをさっさと片付けよう、と思う。
 
 全然関係ないんだけど、1991年にリリースされたロビー・ロバートソンのアルバム「storyville」はマスターピースだ。曲も、演奏も、アルバムに込められた想いも、ミキシングもマスタリングも。それを超えるものを以来、聴いたことがない。スタジオでのリファレスンスにもずっとこのCDを使ってきた。スピーカーの特性も、部屋の鳴りも、このアルバムならすべて聞き分けられる。でも、聴き過ぎて、CDが壊れてた。友人から、最近ロビーの監修の元、リマスターされて、彼のソロが2枚組でリリースされたって聞いた。その値段、2枚で1万円。絶句。でも、俺はその友人に頼んで手に入れた。俺は彼のソロの一枚目はあんまり好きじゃないから、storyvilleは俺的に1万円したことになる。でも、素晴らしかった。思うんだ。CDには再販価格ってものがある。それがレコード屋さんを保護してる側面もある。でも、俺たちはパッケージってものに、愛着がある世代だ。自分で音楽を配信しておきながら、俺は携帯電話で音楽を聞かないし、ipodだって好きだけど、それに精密な音質を求めてはいない。クラッシックやジャズを愛してる人にはmp3はキツいだろうな、と思う。だから好きなものは時に、高くてもいいんだ。ローリングストーンズが今回、渋谷公会堂で派手な仕掛けもなしに、5人こっきりで演奏してくれるんなら、俺は30万でもそれを観たい。長くなくてもいい。1時間でも。でも、ライヴに行って、でっかいモニター観ながら、音が遅れて伝わってくるのは耐えられない。価値ってものは人によって違うんだろうけど、俺はそう思う。芋焼酎のお湯割りを飲みつつ、流れてくるリマスターのstoryvilleは豊潤で無限の拡がりを持った音だった。至福。ありがとう。

by 山口 洋  

日々の記憶

2006/04/03, 22:59 | 固定リンク

4月3日 月曜日 晴れ 

 この3日間、空いている時間はキーラのリミックスに没頭していた。マルチトラックに記録されている24ch分の音を全部聴いて、俺がやることの意味を考えて、歌詞を読んで、作業を始めた。頭の中には「雨だれ」や「しずくに濡れる紫陽花の葉」みたいなイメージがあった。結局、曲の骨格は自分の演奏で作った。狭い仕事部屋だから、次々と楽器をケースから出して録音すると、足の踏み場がなくなっていく。哀しいけど、仕方ない。ヴォーカルのローナンはここに居ないけど、一緒に演奏してるつもりで、演奏を積み重ねた。そうやって作った土台に、彼等がマルチに残していた音を取捨選択して織り込んだ。そして編集して、完成させた。いい時代になったと思う。もうマルチテープを抱えて飛行機に乗ることもない。膨大なスタジオ代を請求されることもない。俺にあって彼等にないものがあるとするなら、それは四季の感覚だと思う。今の季節で良かった。春は嬉しいけど、切ない。気に入ってくれるといいけど。

 1日は某家の花見にお呼ばれした。亡くなった母上が23年前に植えた桜が大木になって、我々を見守っていた。それだけでも充分にぐっと来る光景だった。この世にはなくなってしなうものと、受け継がれていくものがある。
 2日は佐野さんのツアー最終公演を観させてもらった。頭の中に「江戸っ子」と云う言葉が浮かんできた。「粋」だ。幸福感に包まれた客席とステージを交互に観ながら、思考と表現とエンターテイメントの着地点について深く考えさせられた。20代、30代、40代、50代にそれぞれの、そして永遠の「someday」があるのなら、ロックンロールは不滅ってことになる。感謝。だから、友人達と下町で飲んだ。神社の夜桜がきれいだった。下町は東京で一番好きな光景だ。
 3日。親類の法事で鎌倉に行った。ここのお寺の住職の言葉はいちいち心に染みる。お墓の上に桜吹雪が降り注ぐ。陽光と突風の中で、それは何かの映画みたいな眺めだった。
 人の命は永遠じゃない。誰かが、そしていつか自分が死ぬのはとても自然なことだ。だから、今日出来ることに夢中になっていたい。

追伸
 いろんな人からマキシシングル「No fear strikes back」をレコード屋さんに買いに行ったけど、売っとらん。とお叱りを受けます。はい、左様で。今のところ、ネットとライヴ会場のみの販売です。我々、いろんな新しいチャレンジをしつつ、出来る事から、一歩づつ進んでおります。ひとつひとつ現状を把握しながら、前に進んでおりまする。いろいろと不便をお掛けしています(特に地方在住の方)。申し訳ない。よろしくです。

by 山口 洋  
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