日別アーカイブ: 2019年4月15日

最後の木が切り倒されていく

4月15日 月曜日 晴れ ガリッと音を立てて、どんなときも食いしばってくれていた奥歯があっけなく抜けた。ドクターが見せてくれたそれは、できそこないの老木の根っこみたいだった。 生温かい血の味。 あのとき、踏ん張ってたときも、あのとき、悔しい想いをしたときも、こいつは無言で耐えてくれたんだなぁと、妙に愛おしかった。 もはや風前の灯。できるだけ生きながらえるようにと、隣の歯の力を借りてブリッジになっていたものの、舌で押しただけで揺れる奥歯に役目なんて果たせるはずもなく。人間関係と同じで、独立して立っていられなくなったら、終わりなんだろう。 「もっと誠実に生きろよ」。もっとも言われたくない言葉を、もっとも言われたくない人物に言われたことがある。なんで、そんなセリフを吐かれるのか、まるで見当もつかなかったけれど、その言葉は深くこころの隅に刻まれた。いやな感じで。恨んだりはしないけれど、残念ながらこれは一生抜けないだろう。 僕が一番恐れているのは人間の口。これ以上に恐ろしいものなんてない。言葉ひとつで人は簡単に殺すことができる。天使からサタンまで。人間は内包している。 だからいつだって「誠実」ってことにこだわって生きてきた。たとえ、伝わらなくても。認められなくても。天に向かって、やましいことがないように生きようと。 見上げた空は「おまえは間違っていない」と。そして抜かれた奥歯は、僕がそこにたどりつくまで、耐えて耐え抜いた、残骸だった。     ありがとう。それ以上の言葉はないよ。   細く長い道のり ともに多くの壁を超え 透き通った風が吹く日に 冴えないラストシーンを迎えた 孤独な鳥たちが くちばしを天にむけたとき お前の瞳には 沈みゆく夕陽が映ってた そんな詩が浮かんできた。明日、バンドで歌ってみるよ。いい感じだったら、HW SESSIONSで演奏する。こうやって、歌が生まれることを、愉しんでくれたら、嬉しい。18日、横浜。20日、京都だよ。    

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