日別アーカイブ: 2022年6月28日

心眼

6月28日 火曜日 晴れ   今日はいい話だよ。長くなるけど、読んで。  1999年のクリスマス。オレはアルバム「日々なる直感」を創り終えて、ジャケットの撮影のためにわずか数日間、アイルランドにある第二の故郷ドニゴールに飛んだ。  カメラマンはNYに住んでる兄貴分のトシ。  なにせ、天気は悪いし、時間はないし、オレは酒飲みだし。笑。オレはアルバムを創り終えた解放感から、毎晩村のともだちと浴びるように飲んでた。んなもん、サングラスしてりゃわかんないでしょ。被写体として、ひじょーにヒドい。この件に関しては墓場まで持っていくひっどい話があるんだけど、それはさすがに書けねーな。笑。  ドニゴールにはドニゴールのフジヤマって呼ばれてるエリガル・マウンテンって美しい山がある。ゲールタハトってまだちゃんとゲール語が残ってるエリアでもある。その山の麓に湖があってね。そこで年末にアルタンの創始者である故フランキー・ケネディーを偲んで神聖なるライヴが行われるんだけど、にゃんと、出演させてもらえることになった。あり得ない。  身に余る光栄なことでね。こんな神聖なコンサートで演奏できるなんてね。  お客さんは村の人たち。爺婆から子供まで。PAなんてあるわけなくて、緊張感でキーンと空気が張り詰めてるけど、なんとも言えず愛が循環してる感じ。どえらい緊張したよ。  僕は村と音楽とフランキーに感謝を込めて生音で「The homes of Donegal」と「竹田の子守唄」を歌った。割れんばかりの拍手をもらった。ほんとうに感激したよ。  思い返しただけで、震えてくる。  コンサートの後、オレはトシにこう聞いた。「写真、撮ったよね?」。それは千載一遇のチャンスで、彼の腕をもってすれば素晴らしい写真になっていることは間違いなかったから。だいいち、我々はジャケットの撮影に来てるわけだし。  でも、彼はこう言った。「こんな神聖な空気をシャッター音で阻害することなんて、オレにはできない。冒涜だ」って。  オレは自分が恥ずかしかったね。オレが逆の立場だったら、逡巡のあげくシャッターを切ってたと思う。  たいせつなことはいったいなにか?とっても示唆的な話だよ。今のオレなら、ぜったいに撮影しないと思う。撮ろうとしても、あの空気は写らない。  写真に写ってるのは被写体ではなく、あなたのこころだとオレは思うんだ。  かように気高くありたい、とオレはいつも思ってる。

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