日別アーカイブ: 2013年5月26日

同時代性

5月26日 日曜日 晴れ まだ録音されてもいない僕らの新しいアルバム。大切にしたいことは「同時代性」。リスナーと同じ時代に生きてるってことです。 僕の場合で云えば、うーんと、例えば、中学生のときにラジオから流れてきたRolling Stonesの「Black & Blue」。高校生の人生を変えてくれたClashの「London Calling」。そして、20歳のときに聴いてたLou Reedの「New Sensations」かな。 ————————————————— 1984年。僕は20歳、大学2年。世の中はバブルに移行する前。妙に浮かれた空気が漂っていた。音楽はMTVとともに「聴いて想像する」ものから「観る」エンターテイメントに変化しつつあった。デザイナーズ・ブランドが席巻し、野郎共の髪型は刈り上げられ、もみあげは短く、女性の眉毛は無駄に太かった。例によって、僕はその流れに相容れなかった。 ルーの曲は高校時代のオレを撃ち抜いた。たった5分の曲に5つの短編小説が詰まっていたりもする。授業中は彼の歌詞を訳することに費やした。登場する人物は基本的にクズかアウトローかゲイかジャンキー。何よりもロックンロール・ミュージックはイアン・ギランみたいに叫ばなくてもいいってところが好きだった。そして映画や小説のような可能性を秘めている。それは「腰で考える」表現だったのだ。ひやっほー。 彼の曲はシンプルだった。ラジオから流れてくる日本の音楽は「A-B-C-サビ-転調-ドサビ」みたいな曲ばっかりだった。彼のようにシンプル極まりないコードの繰り返しでいい曲を書きたかった。僕はそれをサークル・ソング」と呼んでいるのだけれど、「明日のために靴を磨こう」って曲はまさにそれで、4小節の簡単なリフを5分繰り返すだけ。書けたときはほんとうに嬉しかった。 話を「New Sensations」に戻すね。 僕は画学生だったが、夜警のバイトもしてた。バンドをやるのは金がかかる。仕事が終わるのは朝の7時。朝陽とともに人々は出勤してくる。何だろうなぁ、世間に馴染めないこの感じ。違和感、不安、期待、焦燥、その他もろもろ。 僕は黄色いビートルに乗っていて、カセットデッキにはいつもこのアルバムのテープが入っていた。どうして、その道を通っていたのか覚えていないけれど、ある日の福岡のけやき通りの朝の風景と、この曲と自分の気持ちが奇蹟的にリンクしたことを、今でもはっきり覚えている。まるで光によって、空に道が拓かれたような。いや、まじで。啓示ってのは大げさだけど、「お前はお前の道を行け」と、確かにメッセージだけは受け取った。それは片田舎に住んでいた僕にとってはとてつもない「励まし」で、それが冒頭に書いた「同時代性」の意味。彼が同じ時代に生きて、このアルバムを出してくれなきゃ、僕は今ここに居なかっただろう。NYに渡ろう、そう決めたのだ。 ————————————————— DとG。使ってるコードはたった2つだぜ。 あれからほぼ30年。まったく古くないのだよ、僕の中では。今でもビンビンに有効。それが凄い。聞いてたら、クルマに乗りたくなる。 —————————————————– どれだけ音楽を作っても、そこに答はありやしないんだけれど、「応え」は込めたいといつも思ってます。次の水曜日にはHW SESSIONS、三回目を迎えます。まだチケットあるのかな? 同じ時代に生きてる僕らの新しい音楽、是非体験しに来てちょーだい。

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