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夕陽へのファンファーレ official interview #3

interview  山口洋(HEATWAVE)『夕陽へのファンファーレ』 3.2014年1月 。 ソロアルバムのレコーディングで垣間見えた、HEATWAVEのアルバム制作の方向性。 山口洋は、HEATWAVEのアルバム制作を宣言したものの、伊豆でのレコーディングの後、その作業は完全に暗礁に乗り上げる。ソロツアーの行く先々で、多くのファンからHEATWAVEのニューアルバムを待望する声を直接耳にするたびに、その事実は重く響いてきた。 そうした中、HEATWAVEではなく、山口洋のソロアルバム『Songs of Experience』のレコーディングがスタートすることになる。 聞き手、文、野田隆司(ハーベストファーム) 写真、三浦麻旅子 去年8月に伊豆のスタジオでレコーディングしたんけど、アルバムにできなかった失敗が負のトラウマになっていたわけ。でもファンはもうアルバムが出ると思っているわけじゃん。アルバムを断念して全国を回ったときに、みんなが、今新しい曲をアルバムで聴きたがっていることを改めて肌で感じたの。 だからバンドではできなかったけど、俺が一人で実験も含めて録音して届けようと思って、今年の元旦から意を決して、期限を決めて録音をはじめたの。2月のアメリカ行きの飛行機のチケットを買っておいて。その時までにできないんだったらダメだって、ちょっと追い込んでやった感じ。あの時は、もうバンドのアルバムを作れるという自信はなかったんだよね。 ◎ソロのレコーディングをする上で、何か決めごとはあったんですか。 まず、全部一人でまとめるのがいいと思ったのと、期限を決めておいたこと。あとはドラムを叩かない。それ以外は自分のやれることを全部やってみるって感じ。そこでいろんな実験をした。 俺は、シンガーで、ソングライターで、ギタリストで、ほかの雑多な楽器も演って、なおかつプロデューサーなわけでしょ。いろんな人格でやらないと破綻するから、簡単じゃなかった。 2010年、山口洋と細海魚は『SPEECHLESS』というアルバムを発表した。ライブ音源からノイズを取り除き、生身のダイナミクスを壊さないように新たな音を配置して、緻密なミキシングで作り出されたもの。 細海魚は、今回のHEATWAVEのニューアルバムにおいても、『SPEECHLESS』と同様の方法で制作を進めることを山口に提案した。 HEATWAVEのアルバムに関して、バンドのいろんな音源の素材を組み上げて作るという、以前『SPEECHLESS』というアルバムでやったアイデアを、改めて魚が出したんだけど。ソロアルバムの作業をする中で、バンドのアルバムでも同じことが本当にできるのかどうかも測れたんだよね。そこで、ある程度自分が好きな音を作れるという確信がもてた。音がいいというのは、好みの問題で、絶対的な指標はないわけじゃん。でもソロアルバムを作る中で、コンピュータをつかって、自分が好きな音に持っていくことができるという自信ができた。 ◎『Songs of Experience』のレコーディングでやった作業が、『夕陽へのファンファーレ』の橋渡しになった部分もあるんですね。 俺はエンジニアとしての専門教育を受けてないから、そこにたどり着くにはエンジニアの10倍ぐらい時間がかかるけど、たどりつきたい風景は確実にあるわけだから。そこには絶対にいけると信じているからさ。それも結局情熱だよね。そういう実験がソロアルバムで1ヶ月かけて十分にできたよね。 『SPEECHLESS』は当時は画期的だったけど、今回はあの時のクオリティではダメなのことはわかっていたの。あのアルバムの質が低いってわけじゃなくて、もっと進化した形でやらないとダメだった。その可能性は俺が示さないと、誰も能動的には動かないなぁって思ってたからさ。 『SPEECHLESS』での経験を下敷きに、 終わりの見えない孤立無援の作業へ。 ◎具体的な制作のプロセスを教えてもらえますか。 『SPEECHLESS』は1本のライブをもとにできているんだけど、今回は、クオリティを上げるために、リハーサルや『HW SESSIONS』の何本ものライブとか、合計約16時間分の素材があったわけ。『SPEECHLESS』の約10倍だよ。聴くだけでも地獄のように大変だった。(笑) アメリカの山の中にいるときに、自分への毎日のノルマのような感じで、どこがどうなってるのかをきっちり聴いてたの。1曲ごとに設計図みたいなものを描いて、この曲のこのテイクとこのテイクをエディットしてとか。そうすればこういうアルバムになるはずだっていうのが見えたわけ。でも確信はなくて、砂で城を作るみたいな、かなり切ない、はなはだ根拠のない始まりだった。ここに向かっていくっていうことが、本当にできるのか、自分でも身震いするくらいだった。(笑)孤立無援で、誰も助けてくれないし、ちょっとビビってた。 結局、CDが売れないといわれる時代の中で、お金をかけずにいいものをつくるには、ライブで実験をしたり、リハーサルをした時に、すべてマルチ・トラックで録音しておいて、膨大なデータを自分で編集して作っていくしかなかったんだよね。 (続く)

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