京都へ

5月10日 金曜日 晴れ

件のアップルのiPadのCMを見る。

なんつーか、言葉なし。表現は自由だから。やりたいようにやればいい。

ただ、アコースティックギターが潰されて、人形の目玉が飛び出して、最後に薄いiPadが出てきたときに、ひどいCMだな、マイナスプロモーションだよ、少なくともオレにとっては、と思った。

アップルとのつきあいは優に30年になる。いったいどれだけの金を使ってきたんだろう?家が買えるってのは大袈裟だけど、すげー車の一台くらいは優に買える。

90年代初頭だったか。佐野元春さんのスタジオで詩人ロバート・フロストの質問をしたら、「じゃ、UCLAのライブラリーにアクセスしてみよう!」、と。インターネットを初めて体験した瞬間。これはとんでもないと思って、金もないのにマッキントッシュ一式を買った。たぶん100万くらいしたな。清水の舞台から飛び降りるだけの価値はあると思った。だって、もう図書館に行かなくてもいいんだから。

そしてWindows95が出て、アップルは息も絶え絶えになる。ビル・ゲイツによって絶滅寸前。そんなアップルをサポートしたのは我々クリエイターだった。

アップルはオープンソースだったから、世界中の仲間たちが情報を公開し、ジョークを忘れることなく、新しいアプリケーションを創っていった。決して、それは金が第一義ではなく、デッドの精神にほぼ重なるものだった。知識をシェアしたのだ。オレが一番好きだったのはPower PC9600ってマッキントッシュ。6つあったスロットに拡張カードが差し込まれ、隅の隅まで中身を理解できた、最後のコンピュータ。コンフリクトすると一晩かけて、機能拡張を調べるなんてことが日常だったけれど、ひどく愛着が湧く機械だった。つまりはギターと同じ。あ、初めて買ったクルマと同じだね。ブラックボックスがなく、自分でカスタマイズできて、なおかつ整備もできた。

ジョブスが復帰して、アップルは息を吹き返した。彼は癖の強い人だったけれど、ほぼ天才で、オーガニックなスピリットも持ち合わせていたから、引き続き我々はアップルを応援してきた。

でもまぁ。まさか世界一の企業になるとは思わなかった。そしてあのCM。

高野寛くんがすばらしい投稿をしてた。ほぼ同感。オレはもうハイスペックなMACは買わないと思う。んでもって、持ってるものを使い倒す。決して使われるのではなく。

オレたちが音楽に向き合ってきた肉体と精神の50年近くの歴史はそんなに薄っぺらくはない。楽器を演奏するってことがどういうことなのか。ギターは60年前に作られたものに勝てないし、オレたちの演奏はAIにはできない。そこんとこ4649。

ちなみにね。これを書いてるのもMAC。笑。この部屋にはそれ以外に音楽用のMAC2台とノートが2台ある。音楽用のMACはネットにすら繋がってない。表記は英語。バージョンも一切上げていない。これでオレたちの作品は創られてる。周辺機器が使えなくなっていくのと闘ってるけど、まったく問題ない。てか、時代を追いかけると時代の音になるから嫌なの。

今、80年代のドラム、聞けないでしょ?あれ、オレも当時かっこいいと思ったんだよね。古い写真を見て、自分が恥ずかしくなることあるでしょ?そういう経験、たくさんしてきたから。

だからティム・クックに脅されてもなんともない。

昨日、グレッチを磨いてたんだけどさ。神社仏閣みたいな風格出てきたよ。MACはぜったいにそうはならないから。

なんだか、すごい時代に生きてるなぁ、と思う。

 

なので、プレイリスト#018はMy Guitar Heroes。オレの人生を変えてくれた、たった6本の弦、シールド、アンプ、そしてスピリットたち。スーパーアナログの世界だよ。ちょっと気合い入れすぎて、46曲、3時間20分もあります。これは!って思うものは動画もあります。これは本と完全にリンクしてるんで、本と合わせて愉しんでください。

中には入れたい音源が見つからないものもあったけど、まぁ、しゃーない。すべてをランニング中に聞き返して、今でもいちばんぐっと来たのはルー・リードの「Waves of Fear」。オレにとってのロックンロールが純度180%で詰まってる。このロバート・クインみたいなギターを弾きたいと今日も思う。

 

YouTube Preview Image

 

さぁ。今日は人生最後の楽器車での旅。京都まで。インスタのストーリーズで中継するんで、愉しんでね。って運転してたら、更新できないことに今気づいた。笑。

じゃ、明日。磔磔で。

 

 

 

 

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京都へ への6件のコメント

  1. 辛口ゴールド より:

    私もブルーマスクを初めて聴いた時、一番高揚したのがWaves of Fearでした!
    なのでとても嬉しいです!!!
    そして、初めて柱の「ハッピー バースディ トゥ ユゥ」を聴いた時も同じような感覚になりました!血管がグツグツ沸騰していくようなかっこよさがありました!
    この2曲はセットでよく聴いてます!勿論レコードで

  2. 辛口ゴールド より:

    途中できれたので。。。

    ブルーマスクを聴こうと思ったのは、洋さんのお宅訪問インタビュー記事を読んだのがきっかけです!
    いつもありがとうございます!
    ヒートウェイヴの音楽は私のような30代女にも響きまくってます!
    私より若い世代でもヒートウェイヴ好きな方いるので、洋さんから受け取ったものを次の世代へ必ず繋いでいきます!
    いつか磔磔でヒートウェイヴのLIVE観れるように頑張ります!

  3. 中澤 美穂 より:

    山口さん、お疲れさまです。

    細かいことでごめんなさいね。プレイリスト♯18と紹介されているのは、♯17だと思われます。リンク先に飛ぶと♯17とタイトル表示されるから、混乱するかたはいらっしゃらないはず。心配ご無用かと。

    山口さんの【本を読むための音楽】ずっと流してます。家で仕事してる時も不思議と邪魔にならないです。矢井田瞳さんの声、入っていますか?入っていなかったら私の幻聴(←クスリやってないって)だから許してください。

    山口さんのプレイリストは、私もひたすら再生リストに保存して、自分のプレイリストとして作成してるんです。だから、プレイリストのナンバー違い、珍しく気付いてしまいました。

    【クロッシング ガード】観ますね。【インディアン ランナー】観ました。山口さんが仰っていた「とても美しいから」…感想、また書き込ませて貰います。

  4. masa17 より:

    最新のプレイリスト流しながらinstaのストリーズを繰り返し観てましたぁ。
    なんか音楽と映像が絶妙にはまってて楽しい〜

    学生時代に湘南近辺に住んでて、夏休みとかバイクで関西に里帰りしてたので
    関西に近づいていく道程が「これ、あの辺やなー」って感じでなんか懐かしいです。

    『柱』を子守唄にしてる赤ちゃんの今後も大いに気になりますが(いい意味で!)
    同乗してるオリヅルランちゃんも大丈夫ですかぁーー
    なんか試練受けてましたけどぉー
    明日、磔磔で受け取るのを楽しみにしてまーす。
    名前つけた方がいいのかなーどんなのがいいかなー

  5. ヨコチン より:

    PM9600通称”クンロク”懐かしいですね、僕も長年使ってたんですよ。
    当時高かったメモリ買えるだけ買って挿して、ストレージはRAID組んで、CPUはG4にして。
    めっちゃピーキーですぐハングするし、書いている途中で消えた文章なんか数知れずでしたけど何故か手放せず、OSの絡みでどうしようもなくなるまで使いましたけど、言われてみればそうか、あれは愛着だったんですね。
    こんな話、若い人には何じゃそりゃ、でしょうけどね。

    今日のdiaryに触発されて、久しぶりに名文”How to became a Hacker”を検索して読んだんですが、数十年前にweb上に書かれた文章が今でもたまにアップデートされていて、それを有志が日本語に翻訳している事に驚きました。
    時代は変わりましたが、あの頃の志を持ち続けている人もまだいるんですね。

  6. のり より:

    あのCM、なんで破壊する表現をしたんでしょうね?
    全てを取り入れられるという表現の方が良いとは思うんだけど、もう既にありきたりになってしまったのかな?
    レストア動画なんかを好きで見ている質なので、モノが壊されるってのは見ていて悲しい気分になっちゃうんですよね。
    80年代のドラムの音!
    確かにいま聴くと違和感ありますよね。
    時代の音ってのも無ければそれはそれで寂しいとは思いますが。。
    というかヒロシさんでもあのドラムの音がカッコイイと感じていたのに驚きです。
    僕の場合古い写真を見ても同じような服を着て同じような髪形で・・・違う意味で恥ずかしかったりします(笑)

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