奇妙な感覚


3月25日 金曜日 晴れ

日本に帰った。成田に駐車したクルマはイカれてるだろうと思っていた。でも、損傷も何もなかった。しまった、ガソリンを入れてなかったっけ。でも、たっぷりと入っていた。大渋滞を予測していたが、すんなりと家に帰ることができた。ラジオが午後6時から計画停電だと告げた。その前に何とか滑り込めた。家の中はグシャグシャだと思っていた。とりあえず、青森にギターさえ持っていけば、何とかなる。ギターが置いてある部屋の通路に無数のCDがある。きっと通れないな。でも、嘘のようにどうにもなっていなかった。

とにかく。僕は味噌汁が飲みたかった。白いご飯が食べたかった。不謹慎で申し訳ない。でも、喰いたかった。生存本能だと思う。馴染みの店に電話して、喰わせてくれ、と頼んだ。街は停電で真っ暗。こんな光景、初めて観た。再び、不謹慎で申し訳ないが、暗闇を歩くことは怖くも何ともない。ずっと無駄にそこを歩いてきたから。目が慣れてくれば、確実に見える。今まで一体どれだけの電気を無駄に使っていたのか。うるさい音楽もない、ネオンもない。悪くない。経験していないけれど、「戦後」みたいだ。

店はろうそくで営業していた。店主は丁寧に出汁を取って待っていてくれた。白いご飯と味噌汁。美味かった。あまりの美味さに、NYの兄貴にメールした。当たり前だけれど、周囲はすべて日本語。不思議な感覚だった。アメリカの山に居るとき、外で食事をするときは殆ど独りだった。まずかったし、誰も話し相手は居なかったけれど、妙に居心地がよくて、ちっとも寂しくなかった。でも、帰国してから、ずっと宙に浮いているような不思議な感覚がある。誰かに持ち上げられて、足が地面に接地していないような不安定さ。云っておくけど、店が悪い訳じゃない。心からのホスピタリティーを感じた。違和感を感じているのは、あくまでも僕の問題。幽体離脱しているように店が俯瞰で見えるのだった。何なんだ、この感覚。多分、アメリカに居た、どうにもならないこの状況が僕をそうさせてるんだろう。帰ってくるのはこの街じゃなかったかもしれない。いや、でもそれは世界中、何処にもない。美味すぎるご飯を喰いながら、そう思う。まったく酒を飲む気分になれなかったが、飲み屋で味噌汁とご飯だけってのも失礼だ。日本酒を飲んでみた。まったく酔わなかった。「情」はとても大事だけれど、多分僕はアメリカで「情」に流されない修行をしてきたんだと思う。やっかいだけれど、この感覚を大切にするしかないし、そのために僕は外国に派遣されたんだろう。

空気が濃い。空気に栄養がありすぎる。階段は嘘のようにぴょんぴょん昇れる。でも、濃くて、息苦しい。何なんだろ、この感覚。

半分は治療が目的で行ったはずなのに、右手が上がらない状態が続いていた。こんな身体じゃライヴはやれない。頼み込んで、治療院に行く。亜脱臼だった。どうりで痛いはずだよ。

とにかく。僕は今から青森県弘前市に行く。音楽を鳴らしにいく。最低限の機材を持って。宙に浮いたような感覚で、どんなライヴになるのか、僕にもまったく分からない。でも、慌てず騒がず、出てきたものをフツーにやることでしかない。おっと、これが余震か。

追伸
明日のライヴ、弘前のFM局「apple wave」によって、u-streamで生中継されることになりました。開演は18:30です。

http://www.ustream.tv/channel/applewave

それから会場の弘前学園大学の厚意により、会場に暖房を入れてもらえることになりました。感謝です。

山の空気は薄かったけれど、貴重さを教えてくれた。

山の空気は薄かったけれど、貴重さを教えてくれた。

居候先からの風景。朝、漏れてくる光で、その日の天候が分かるようになった。

居候先からの風景。朝、漏れてくる光で、その日の天候が分かるようになった。

しかし、沸点が低いってことはこんなに飯がマズくなるとは。

しかし、沸点が低いってことはこんなに飯がマズくなるとは。

居候のくせに、こんな部屋を与えられた。Cole、Sarah、兄貴、ありがとう。

居候のくせに、こんな部屋を与えられた。Cole、Sarah、兄貴、ありがとう。

暖炉のベンチレーションを間違えて、部屋中スモークしたりもした。

暖炉のベンチレーションを間違えて、部屋中スモークしたりもした。

さらば山。ビックムーンが彼方に。

さらば山。ビックムーンが彼方に。

彼方に金門橋。サンフランシスコにて。

彼方に金門橋。サンフランシスコにて。

さぁ、帰ろう。

さぁ、帰ろう。

東北地方の上空。明日、行くかんね。待っててね。

東北地方の上空。明日、行くかんね。待っててね。

いつかblogに書いた、トレイルで死にかけているオレ。これ、やらせじゃないですから。スキーは吹っ飛び、力尽きてます。撮影、兄貴。

いつかblogに書いた、トレイルで死にかけているオレ。これ、やらせじゃないですから。スキーは吹っ飛び、力尽きてます。撮影、兄貴。

バス停にたどり着き、立ち上がることも出来ないオレ。自然は凄かった。撮影、兄貴。

バス停にたどり着き、立ち上がることも出来ないオレ。自然は凄かった。撮影、兄貴。

カテゴリー: 未分類   パーマリンク

奇妙な感覚 への9件のコメント

  1. c より:

    おかえりなさい。
    一時でも、写真で和みます。
    山口さんが日本を発たれる前と帰ってこられてからの景色は全然違ってると思いますが、東北で肌で感じたこと、様々なこと、またDIARYに書いてください。
    礼拝堂に音楽が響き渡ること、祈っています。

  2. 人事くん@高松 より:

    おかえりなさい!明日、バキッとやってください!
    いい時間になりますように。
    奇妙な感覚のライヴのあと、倒れませんように。
    どうぞご自愛も。
    u-stream生中継とてもうれしいです。ありがとう。

    ではでは、ライトオフ!

  3. こゆき より:

    それぞれの心に希望の光が降り注ぎますように。

  4. 歯欠けのちぐさ より:

    たった今まで、弘前学園大学礼拝堂でのライブをU-STREAMで観ていました!
    山口洋さん、外国の山から無事に帰ってきてくれてありがとぅ。
    4月の高知ライブ、今から楽しみに待ち構えています。

  5. c より:

    U-Stream applewaveさん、ありがとう!
    山口さん、ありがとう♪ 魚さん、ありがとう♪
    終盤のアコーディオンとギター、言葉がみつからないくらい・・・♪よかった。
    「Starlight」「満月の夕」高い天井に響いてました。ありがとう。

  6. 武政篤 より:

    ライブありがとうございました。
    東北地震で被災した方に、多くの活力が届いたと思います。
    体を壊さぬように、残りのライブFight!

  7. Raku より:

    U-STREAMで見ました。
    素晴らしかった。配信してくれたアップルウェーブさんに、本当に感謝です。
    自分もいま、被災地の方に対して何かできないか、
    海外にいる人と連携させていただきながら、
    行動を起こし始めた所です。

    大変な勇気をもらいました。
    ありがとうございました。

  8. なおみ より:

    山口さん、魚ちゃん、ネット配信ありがとう!
    東北の友人へ配信の件連絡したら、「本当は行くつもりだったけど・・・」という
    コメントを数人いただきました。そんな友人がライヴを観れて本当に嬉しく思います。

    礼拝堂はきっと天井が高く良く響いたのでしょう。こだまのように響き渡る歌。
    バックのステンドグラス。会場を埋め尽くすオーディエンス。温かな拍手。
    PCの向こうに同じようにこのライヴを待ちに待っていた沢山のファンと、
    同じ時間を過ごせてよかったと思います。
    action! 私にできる方法で東北を応援したいと思います。

  9. ray より:

    USTREAMでの中継観ました。apple waveさんの温情に感謝します。
    ライヴの熱度はやはり会場でダイレクトに感じるものが最高ですが、
    目には見えない、肌では感じられないその思いの「なんて言ったら
    わかんねぇが、すごがった」感じが伝わって。よかったです。
    山口さんのMCの「脱臼」具合も和みました。(笑)
    っていうか、肩やら首やらあちこちの不具合、早く完治しますように。
    被災していない者たちはとにかく口角上げて、スマイル!
    いい波を人の力でつくっていきましょう。

    会場入口にフジテレビさん(「僕らの音楽」)から花が届いていましたが、
    またご出演の予定があるのでしょうか? だとしたら、とても楽しみです。

武政篤 への返信 コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>