金沢近江町、メロメロポッチ、最後の夜

8月25日 日曜日 晴れ

金沢の裏通りが誇る魔界、メロメロポッチ。立ち退きのため、一旦店を閉めざるを得なくなった、21年の歴史、その最後の夜。

僕とメロメロポッチのこと、10年前くらいまでまとめてくれている人がいるから、興味がある方はこちらを。まぁ、ほんとうにあんなことも、こんなことも。ほんとうにいろいろあった。店主、熊野の口癖、「それもまた、人生」。

地元の素晴らしい才能、杉野清隆とともに、幕引きを頼まれた。断る理由はどこにもなかった。

揃いの椅子なんてひとつもない。本当は生ジュース屋。限りなく猥雑、でも何人たりとも拒まない、去る者は追わない、あの地下を降りて、ドアを開けるのには勇気がいる。でも、開けてしまえば、あなたを拒むものはなにひとつない。人生という魔界への扉。

それがあの店だった。過去形で書くのは哀しいけれど。

今回、初めて新幹線で金沢に行った。確かに便利だ。でも、こうも思う。我々は便利になって、なにかを失った。たとえば、旅情。飛行機で金沢に行くのはまだいい。あの山脈を越え、日本海から小松空港にアプローチするとき、豊かな白山が見える。

北陸新幹線は長野を抜けて、金沢に行く。長野と金沢はこんなに近くない。あくまでも僕の感覚では。

近江町。300年の歴史を誇る、金沢市民の台所。ここに通うようになって、20年くらいだけれど、整備されて、近代的にはなって、そしてその入り口にあるメロメロポッチは営業を終了する。ある意味、ザッツ日本なのだった。

僕らはどんな理不尽にも豊かに笑顔で抵抗しよう。昨日の客席の顔、忘れられない。あんまりみんながいい顔だから、最後の曲で店主熊野をステージに上げた。だって、やつはこれを見たことがないんだよ。21年も続けてきて、この光景を知らなかったと彼は言ってた。だろ?

これこそ、君と仲間が続けてきた裏通りの財産なんだよ。かけがえのないものなんだよ。明日になって、ほんとうになくなってみればわかるさ。それがどんな風に街に機能してたかってこと。

今日は最後の曲だけ、動画撮っていいよって。だって、この空気残しておきたかったからね。まぁ、ほんとうは映らないんだけど。ひとつ借りるよ

いつか、新しい店が見つかったら、必ず行くから、金沢のみんな、メロメロポッチをよろしくね。

ほんとうにありがとう!

店主、熊野。

この空間に感謝を込めて、最後に記した。ありがとう!

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金沢近江町、メロメロポッチ、最後の夜 への5件のコメント

  1. 安全第一 より:

    僕らはどんな理不尽にも豊かに笑顔で抵抗しよう。

    このことばに尽きますなー。
    色々な事象ありますがユーモアに変えて抵抗するしか時代的にも私たちに残されたカウンターパンチは無いのかも。人生短いしね。

  2. そばや より:

    金沢の皆さん、カッコいいなー。
    ステージからの光景、初めて見ました。
    溢れるものが、わんさか感じますよ。
    メロメロポッチに、山口さんが引き付けられるのがわかりましたよ。また、新たなメロメロポッチを!

  3. 風にハモ太郎 より:

    「それは外れのお店でしかない。けれど、その場所は僕の人生にとって大当たりの場所でした」と熊野さんはtwitterで感謝のコメントを発信されています(涙。そして最高のコメントです)。私は12年ブリのメロポチ再訪だった事が、メロポチさん山口洋.L.B.Kで判明しました。

    杉野さんの歌、後半は地元皆さんのコーラス、じわじわ染みて、いつか自分もハモっている、熊野さんの実況中継で山口さんの登場、愛と毒舌のMCに笑い転げ、戦場も想起する盲目操縦士のマシンガンギターが映画アウトレイジのように襲いかかり、耳をすませる「紡ぐ歌」の綾織りが、人生の流れ星が、自由が、友としてできる事が、そして魔界をつくったその張本人が「新しい風」でその魔界を解き放たれた!

    ここまでが本編ですが、本編終了後のアッコさんの歌が、私にとって「宝」でした。
    いや、メロポチの「種子」と言うべきが。それは口に出して、文章にして伝えられないもの。説明しようがなく、沈黙しますが、これはかけがえのない歌でした。熊野さんがライブ前MCで出されたなぞなぞの答えが繋がりました。

    金沢出身の仏教家Zen鈴木大拙さん、最新刊の扉の言葉に「実際のところ、われわれは皆、生きる事の芸術家として生まれてきている。」大拙さんもきっと武蔵が辻の
    魔界に目を細めて喜んでいらっしゃったはず。

    会場を後にし、階段をあがると、裏通りの屋台骨を支える皆さんが、路上に座りだべっている姿に、グッとくきました。
    有難うメロメロポッチさん!金沢は大好きな町です。又来ます。新しい魔界が必要とされる時代だと思うんです。
    メロポチさんを教えてくれた山口洋さんに感謝します。

  4. echo より:

    今のメロポチでのラストライブに駆け付けられて、ホント幸せ者。最強の魔界。メロポチがなくなるのをようやく実感し始めて、寂寥感。

    2003年の香林坊ハーバーから金沢に行ってました。毎回じゃないけど、振り返ると思ってた以上に行ってました。
    高岡も含めて、よく北陸に行ってたんで、前の職場の方に北陸で仕事あれば紹介しようか?なんて言われたことも。

    熊野さん、お疲れ様でした。でも、また新たな場所でメロポチお願いします。これからも北陸に行かせてください。最後にカレー食べられなくて心残りです。あの落ち着く居心地のよさ。淋しい!

    久々に再会した友達、声をかけてくれた方、ありがとう!
    姿勢に気をつけていきまっす!

  5. 堺のヒロシ より:

    百万石通りという名の金沢メインストリート沿いにある建物地下にメロポチはある。その道路拡張のために閉店する…。裏通り代表のひとりとしてこの事実を知ったとき、やはり動揺した。なんとか取り壊しせず生き延びてきた場所だけに、今回も白山から神風が吹いて閉店せずに済むのではないか、といちるの望みをいだいていた。しかし、それは叶わなかった。
    それなら、その最後のライブは見届けなければ一生後悔する。
    いつものごとく前乗り。万全を期して参戦。素晴らしい夜を過ごせました。腕を振り上げ思いっきり声出して最後の曲を皆で歌いました。思い残すことなく、次の場所へ。いきましょう!
    メロポチにありがとう。山口兄貴にありがとう。すべての出会いにありがとう。
    新しいメロポチでの山口兄貴ライブで、愉快♪♪愉快♪♪な仲間にまた会える日を楽しみにしてます。
    兄貴、いつもいつもありがとうございます。

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